News Release

神経科学に活用するマイクロLED神経プローブ

脳機能解明に向けた脳神経活動の制御・記録技術

Peer-Reviewed Publication

Toyohashi University of Technology (TUT)

Neural Probe

image: MicroLEDs optically control neurons and neural recording electrodes monitor neural activity. view more 

Credit: COPYRIGHT (C) TOYOHASHI UNIVERSITY OF TECHNOLOGY. ALL RIGHTS RESERVED.

<概要>

豊橋技術科学大学電気・電子情報工学系を中心とした研究チームは、神経科学で活用するためのマイクロLED神経プローブを開発しました。この神経プローブはマイクロLEDから発する光を用いて脳神経活動を制御するとともに、記録電極により神経活動をモニタリングすることができます。本研究では、神経プローブを用いてマウスの脳波の取得に成功し、マイクロLEDから神経制御に十分な光出力が得られることを確認しました。開発したマイクロLEDツールは光で神経細胞の制御を可能にする神経科学分野の光遺伝学研究の発展に貢献することが期待されます。

<詳細>

高次脳機能に関連する情報プロセスは絡み合って存在する神経細胞の複雑な相互作用に起因していることが知られています。光遺伝学技術は他の細胞に影響を与えることなく光で特定の神経細胞を正確にコントロールすることができるため、脳神経活動と動物の行動の因果関係の解明に貢献し得る技術として期待されています。従来はマウスの脳組織に光ファイバを刺して光刺激をして神経細胞を制御していましたが、ファイバは太く脳にダメージを与えたり、複数箇所を刺激することが困難でした。

工学分野では「マイクロLED」という従来のLEDよりも1/10、1/100以下となる小さなLEDの集積化技術が注目されており、1cm角の中に数百万個のマイクロLEDを並べることで高輝度・高効率なディスプレイの実現が期待されています。本研究では、この小さなLEDを神経科学分野に活用することを考え、複数のマイクロLEDが集積された神経プローブを開発しました。マイクロLEDは数十μm角ととても小さなものですが、神経細胞を活性化するのに十分な明るい光を作り出すことができます。今回作製したマイクロLEDを活用した神経プローブはこれまでの神経科学ツールの問題を解決でき、高い時空間分解能によって複雑な神経活動制御および記録が可能になります。

<開発秘話>

10年以上LEDのための材料開発やLEDの微細集積化技術の研究を進めていましたが、すでに産業化が進みつつあるLEDにおいてこのLEDを発展的に活用するための新たな研究分野を模索していました。そうした中、研究とは関係のない出会いの中で薬学の研究者と出会い、何気ない会話の中で研究の話をしました。半年後、その薬学の研究者から相談をいただき、今回の研究成果につながりました。簡単にわかりやすく説明したことや、異分野のテーマでも積極的に興味を持って話をしたことが、医薬学と工学との融合領域研究に繋がったのではないかと考えています。

<今後の展望>

研究チームは、開発したマイクロLED神経プローブを光遺伝学研究に関連する動物実験へと活用して神経科学の発展に貢献していきたいと考えています。本ツールを用いて脳機能の理解が進めば、がんや精神疾患、てんかんの治療法の確立やブレイン・マシン・インターフェースへの応用、脳機能をベースにした新たなアルゴリズム開発を目指すAI分野などの多くの分野へ活用されると期待されます。

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<論文情報>

Hiroki Yasunaga, Toshihiro Takagi, Diasuke Shinko, Yusei Nakayama, Yuichi Takeuchi, Atsushi Nishikawa, Alexander Loesing, Mashiro Ohsawa, and Hiroto Sekiguchi (2021). Development of a neural probe integrated with high-efficiency MicroLEDs for in vivo application, 10.35848/1347-4065/abcffa.

<謝辞>

本研究の一部は国立研究開発法人科学技術振興機構さきがけ(JPMJPR1885)、公益財団法人光科学技術研究振興財団、および公益財団法人日東学術振興財団の援助を受けて行われました。


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