過去に他の治療法をすべて使い尽くした再発型の小児癌と診断された2人の乳児が、遺伝的に改変したT細胞を用いた初めてヒトを対象とした実験的治療を受けた後、無病状態のままであることが新しい分析で報告された。 このような細胞ベースの方法を若齢小児に対して実施することは困難であった。若齢小児は、米国の全小児癌症例の25%を占めるB細胞急性リンパ性白血病(ALL)が非常によくみられる集団である。1~10歳の小児に対するALL治療法はいくつかあるが、1歳未満の乳児の予後は一般的にかなり不良である。改変またはキメラ抗原受容体(CAR)T細胞はALLとの戦いにかなり有効であることが分かっているが、これらの癌殺傷細胞は個々の患者から作製する必要があり、非常に若齢の小児などの健康なT 細胞が十分にない患者には不可能である。良い代替法の探索において、Waseem Qasimらは、現行のT細胞療法の重要な障害を克服する新しい方法を開発した。Qasimらは、乳児自身のT 細胞を自らの癌と戦えるように微調整するのではなく、双方の被験者の血液から白血病を根絶した「ユニバーサル」なT細胞を作製した。1人目の試験参加者は治療の2ヵ月後に皮膚の移植片対宿主病を発現したが、ステロイド投与と骨髄移植後に回復した。2人目の参加者は治療に伴う重要な合併症を発現せず、治療のフォローアップとして骨髄移植を受けることもなかった。双方の乳児は治療後28日以内に完全寛解となり、以後10および16ヵ月間白血病を発症していない。
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Journal
Science Translational Medicine