News Release

光と月と外来種?!

人工光による外来カエルへの影響は月の満ち欠けに影響される

Peer-Reviewed Publication

Tokyo University of Agriculture and Technology

Outline of the result of this study

image: Relationship between light pollution and invasive toads' foraging behavior. Artificial light provides food resources such as insects for invasive toads, and the amount is influenced by lunar phases. view more 

Credit: Hirotaka Komine/ TUAT

ポイント

  • 街灯や人家などに使われる人工的な光(人工光)は外来種のカエルが捕食する量を劇的に増やす。
  • この捕食量の増加は、月の満ち欠けや地域ごとの明るさに影響される。(暗い時期や地域では人工光による捕食量の増加がより顕著になる。)
  • 月の満ち欠けや地域に合わせて人工光を適切に利用する事で外来種の管理に貢献する可能性。
 

本研究成果は、イギリスの学術誌Scientific Reports誌(4月16日付(イギリス時間))に掲載されました。
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-020-63503-9 
掲載誌:Scientific Reports
論文名:Impacts of artificial light on food intake in invasive toads(外来オオヒキガエルの餌利用に対する人工光の影響)
著者名:Hirotaka Komine, Shinsuke Koike and Lin Schwarzkopf(小峰浩隆、小池伸介、シュワルツコフ リン)

概要  

東京農工大学の小峰浩隆特任助教、James Cook University(オーストラリア)のシュワルツコフ教授らの国際共同研究グループにより、人工光が、外来種であるオオヒキガエル(以下、外来カエル)(注1)の捕食する量を劇的に増やすことがわかりました。さらに、月の満ち欠けや周囲の光害(注2)の程度が、捕食する量に影響する事が明らかになりました。これらは、人工光によって外来種による在来種への被害が大きくなるとともに、その効果が月の満ち欠けや、地域の明るさによって異なる事を示しています。人工光と月、外来種との関係の一端が明らかになりました。

研究背景  

発明家・エジソンによる白熱電球の改良以来、人工光の利用は世界中で急速に増加してきました。現在では、私たちの生活になくてはならない人工光ですが、その過剰な利用により生態系に悪影響を与えてしまう事が心配されています。一方で、外来種の導入も生態系に大きな影響を与えるため、世界的な問題となっています。しかしこれまで、これらの光害問題と外来種問題は別々に考えられる事が多く、その関連性はほとんど検討された事がありませんでした。しかし、人工光は在来の昆虫等を誘引する事で、捕食性の外来種に餌資源を提供し、その繁栄に寄与しているかもしれません。

研究成果

 本研究グループは、南米原産の外来カエルが捕食する量に、人工光がどのような影響を与えるのか、その効果はどのような環境によって左右されるのかを検証しました。具体的には、オーストラリアの熱帯乾燥林6箇所に4メートル四方の大型ケージを設置し、その中に外来カエルを導入しました。そして、実験的に人工光を点灯させた場合の外来カエルよる捕食量の変化、及び環境要因との関連を評価しました。

 その結果、人工光により外来カエルの捕食量は劇的に増加し、その効果は月の満ち欠けやその場所での既存の光害レベルに影響される事が明らかになりました。これは、人工光が外来種に多量の餌資源を供給し、その効果は時間(月齢周期)や空間(各地域の光害レベル)によって変化する事を示しています。この結果から、光害による生態系への影響と外来種による生態系への影響は関連し、影響が増大し得る事が示唆されました。

 また、人工光を月齢周期や地域に合わせて柔軟に管理する事で、生態系への影響を抑えられる可能性が考えられます。具体的には、月が暗い時期の人工光の利用を抑える事で、外来種への餌の供給を減らす可能性があります。さらに、光害レベルの小さい郊外では人工光の効果が大きくなるため、郊外に散在する人工光の管理を優先する必要が考えられます。

 加えて、今回得られた知見を、外来種の駆除に利用することも考えられます。例えば、オーストラリアでは、人工光を利用した罠を使った外来カエルの駆除が進められていますが、罠の設置を月が暗いタイミングおよび、人工光に晒されていない地域で行うことで、より効率的に外来カエルを駆除出来る事が期待されます。

今後の展開

 私たち現代人の生活には身近な人工光ですが、生態系への影響の解明は始まったばかりです。今後は、各生物種への影響評価を積み重ね、生態系全体への影響を適切に理解していく必要があります。また、現在は光害問題と外来種問題が生態系への攪乱要因として別々に議論される事がほとんどですが、それらの関係をさらに明らかにする事で、より効果的な対策に繋がる可能性が期待できます。例えば、外来種は人間によって撹乱された環境に多く生息している事が知られていますが、その背景には人工光による影響があるかもしれません。今後、人工光の適切な利用と外来種の効率的な管理のために、双方の関係を明らかにしていく事が必要であると考えられます。

用語説明

(注1) オオヒキガエルは南米原産の生き物ですが、農業害虫の駆除のためにハワイやオーストラリア、小笠原諸島や石垣島といった世界中の地域に導入されました。しかし期待された効果はなく、捕食や毒によって在来生態系に深刻な影響を及ぼし、世界的な問題となっています。

(注2) 過剰な照明等、人工的な光による居住者や交通、天文観察、生態系等に及ぼす様々な影響を光害と言います。

○研究体制  

本研究は、国立大学法人東京農工大学大学院グローバルイノベーション研究院の小峰浩隆特任助教、農学研究院の小池伸介准教授、James Cook UniversityのLin Schwarzkopf教授らの研究グループによって行われました。本研究は東京農工大学大学院グローバルイノベーション研究院の助成を受けたものです。

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◆研究に関する問い合わせ◆

国立大学法人 東京農工大学大学院
グローバルイノベーション研究院
小峰浩隆 特任助教
E-mail:komitorihiro(ここに@を入れてください)gmail.com

プレスリリースhttps://www.tuat.ac.jp/outline/disclosure/pressrelease/2020/20200420_01.html


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