News Release

特集:都市に覆い尽くされる地球

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

Special Issue: Urban Planet

image: Some major cities have made efforts to reduce air pollution, but the results are often not sufficient or long-lasting enough to mitigate health problems associated with air pollution. This material relates to a special issue of <i>Science</i>, "Urban Planet," that includes two Reviews, six Perspectives, and a series of new stories that feature the wide range of challenges from and impacts of an increasingly urbanized world. It appeared in the May 20, 2016 issue of <i>Science</i>, published by AAAS. view more 

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都市惑星についての今回の特集号では、Review2本、Perspective6本、および一連の新しい研究結果で都市化が進む地球の様々な課題や影響を取り上げている。

Daniel KammenとDeborah SunterのReviewでは、都市における再生可能エネルギーのより良い利用方法に注目している。都市部で生活しているのは世界人口の54%であるにもかかわらず、人為的な温室効果ガス排出の70%は都市部から出ている。KammenとSunterは世界各都市での研究結果をまとめ、バイオマスはエネルギー源として実用的な選択肢ではないと思われる一方で、太陽や風、地熱、廃棄物を利用するエネルギーはまだまだ未開発だと述べている。たとえば、ロンドンで建物の側面をソーラーパネルとして最大限活用したとすれば、日射は45%まで増加する。中国では、特別設計の建物で周辺の風の1.5~2.5倍の速度で風を通せば、タービンは15倍も多くエネルギーを起こすことができる。建物の設計に加え、輸送手段も都市のエネルギー効率の向上には重要な方法である。たとえば、スイスのフラウエンフェルトで駐車場に太陽光発電を導入すると、フラウエンフェルトにおける電気自動車用エネルギー需要の15~40%を供給できる。KammenとSunterは、再生可能エネルギーを利用する設計の採用や既存物の改造には経済的利益があるが、その実施や政策には課題が残っていると述べている。

Tove LarsenらのReviewでは、都市の水資源管理(UWM)を掘り下げて研究している。UWMはインフラの老朽化や汚染物質の出現といった要因によって状況が緊迫してきている。20世紀には集中型水道システムが標準であったが、特にそういったインフラが構築されるアジアやアフリカの急発展する都市部ではより革新的なアプローチが必要だとLarsenらは述べ、水生産性の向上、廃水の分散もしくは1ヵ所での処理、人間の汚物の発生源分別、制度および組織改革といったUWM改善のための重要な方法を複数提案している。

Karen Setoと Navin RamankuttyのPerspectiveでは、進行する都市化に起因する食料供給網への影響と食生活の変化について考察している。都市のライフスタイルには動物性タンパク質の割合の増加、消費財廃棄物、家庭での調理の減少、食品包装の増加が付きものである。こういった供給網の需要側面(都市部)は多数の研究で注目されてきたが、都市化進行の農業面への影響を把握するにはまだまだ研究が必要だとSetoと Ramankuttyは強調している。

Frank KellyとTong ZhuのPerspectiveでは、ロンドンと北京における車両による大気汚染の削減への取り組みについて述べている。両都市では、路上の車の台数を減らす独創的な取り組みは当初多少の成功はしていたが、成果は不十分で長続きもしなかった。大量輸送システムの拡大で達成できたのは、増加する人々を効率的に都市のあちこちに移動させることだけであったとKellyと Zhuは述べている。

Mark McDonnellとIan MacGregor-ForsのPerspectiveでは、都市生態学から得た見識について述べている。都市化によって追い出されてしまう種は多いが、一部の種は都市生活に適応している。たとえば、シジュウカラ(Parus major))が騒がしい状況でもコミュニケーションが取れるように鳴き声を変えることや、細かく分断化された都市環境で生育する植物が種子の散布方法をそこに適したものに変えることが研究によって分かっている。都市を計画する際に都市生態が考慮されることは増えており、都市における人間と野生生物の共生に役立っているとMcDonnellとMacGregor-Forsは述べている。

Terry Hartigと Peter Kahn Jr.のPerspectiveでは、都市部にある自然の景物が心理的利益をもたらす仕組みについて述べている。都市環境と農村環境の心理的影響の違いを明確にするのは困難だが、自然体験に心理的利益があることは研究により明らかになっている。都市計画に自然の景物を組み込むことは精神的健康を向上するだけでなく、環境に対する考え方を形成することにも役立つとHartigと Kahn Jr.は述べている。

2050年の段階で存在する都市部の60%はまだ建設されていないと推測されている。Anu Ramaswamiらはそういった都市の拡大を実現するために、8つの行動指針に焦点を当てている。そういった指針の下、政策立案者らはこれらの都市部を環境維持し建設するために確実な行動を起こす必要がある。行動指針には都市のタイプによって必要な戦略が異なるのを認識することなどが含まれる。

J. Vernon HendersonらのPerspectiveでは、発展途上国では土地利用をより効率的に行うことで多数の都市の機能が向上すると述べている。Hendersonらはケニアのナイロビの中心地に近いスラム街をモデル化して自分たちの意見を解説し、ナイロビのスラム地区が主に機関の腐敗が原因で開発が遅れていると述べている。

一連の新しい研究結果の記事ではさまざまな都市問題を取り上げている。1つ目の記事では都市に住む最も悪評高い動物、ネズミに焦点を当て、蔓延るこの齧歯動物から人へのレプトスピラ症の感染を阻止するという課題を掘り下げて研究している。2つ目の記事では中国政府が近年の爆発的な都市化をより持続可能なものにすることに重点的に取り組んでいる方法を研究している。3つ目の記事では地球で最も環境に優しい都市になるための野心的な取り組みに乗り出したカナダのバンクーバーに目を向けている。最後の記事では人間がどう進化して都市生活に適応するようになったかを読者に説明している。

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