ジカウイルスは発生時の脳細胞を選択的に殺滅することが、新たな研究により報告された。この結果は、ジカウイルスがいかにして赤ちゃんの脳障害、特に小頭症(脳が適切に発達しない稀な先天障害)を引き起こし得るのかについてのエビデンスを提供している。ブラジルは、2015年5月に最初に感染が見つかって以来、これまでに例を見ないジカウイルスの蔓延の只中にある。それ以来、同国における小頭症の報告が顕著に増加しているが、ウイルスと脳障害の関係はこれまで明らかにされていなかった。今回Patricia Garcezらは、人工多能性幹細胞に由来し、神経幹細胞のクラスター(「ニューロスフェア」と呼ばれる)および脳オルガノイド(両システムともin vitroで胎児脳を研究するためのモデル)として増殖させたヒト神経幹細胞を用いて、ジカウイルス感染の影響を調べた。増殖中の細胞に、ブラジルの患者から分離したジカウイルスを感染させたところ、ウイルスは数日間でニューロスフェアのほとんどを殺滅したのに対して、制御条件下では数百のニューロスフェアが成長した。脳オルガノイドに焦点を当てた第2の実験では、ウイルス感染により、制御条件下の脳オルガノイドと比べて感染させたオルガノイドでは成長が40%抑制された。さらに、デングウイルス(ジカウイルスと類似するフラビウイルス)の影響を評価する実験では、6日後のウイルス生存に有意な差がみられ、デングウイルスの生存率は大幅に高かった。また、デングウイルスに曝露された脳オルガノイドでは、対照と比べて成長の抑制は示されなかった。これらの結果は、ヒトの神経幹細胞におけるジカウイルスによる悪影響はフラビウイルス科の一般的な特徴ではないことを示唆しており、ジカウイルスが発生時の脳に及ぼす影響の可能性に関する洞察を提供してくれる。胎発生の様々な段階を通じてジカウイルスがもたらし得る影響を明らかにするには、さらなる研究が必要であると著者らは述べている。
###
Journal
Science