2つの新しい研究によって、土壌中の生物相構成が植物の多様性を促進する仕組みが解明された。この結果から、人目につかない地下の細菌や菌類がその上にある植物の発育にどのような影響を及ぼしているかが浮き彫りになっている。こうした関係が至る所に存在することは知られているが、まだ不明な点が多い。1番目の研究では、Jonathan Bennettらが、土壌中に存在するアーバスキュラー菌根(AM)と外菌根(EM)が北米の樹木の生物多様性にどのような影響を及ぼしているかを探った。成木が土壌中のこうした菌類の構成に影響を及ぼすことは知られており、その結果として同種の若木が根付けるかどうかにも影響を及ぼしうる。たとえば、成植物の近くに敵対生物(土壌性の草食動物や病原体など)が集積していると、類似種の加入が減るので、局所的に多様性が増加する可能性がある。言い換えれば、共生生物が集積していると、ある種による優占度が高くなって多様性が減少する。今回Bennettらは、地理的に異なる550の個体群から、北米に生息する55の温帯樹種の試料(EM30種、AM25種)を採取した。分析の結果、EMをもつ若木は同種の成木付近にある非常に豊富なEM菌から恩恵を受けるが、AMをもつ若木は同種の成木が付近にある場合は敵対生物にさらされやすいことが示唆されている。AMをもつ若木のほうが病斑ができやすいこともわかった。このことから著者らは、AM菌が提供する保護作用はEM菌の定着によるものよりも劣るのではないかと提案している。一連の実験を通じて、若木をこの2種の菌類に前もって曝露させたところ、EM菌の場合は根の傷害が減少して生存率が向上するが、AM菌の場合はそうはならないことがわかった。
また別の研究では、François P. Testeらが、5種類の栄養素抽出方法――AM、EM、エリコイド菌根(ErM)、窒素固定(NF)細菌、非菌根であるクラスター根(NMCR)――を利用している植物の周囲から土壌を採取した。彼らはオーストラリアに生息する16種の植物を、これらの生物相をさまざまに組み合わせた土壌で栽培した。その結果、NF細菌とNMCRをもつ植物は全生物相を含む土壌では生存しにくいことが判明している。こうした種類の植物は、生き延びた場合でも生長が悪くなった。これに対して、EMをもつ植物の生存率は全生物相を含む土壌で向上した。生物相が欠けている不毛の土壌では、AM、EM、NF細菌をもつ植物は生長が悪くなった。これは菌根菌の根定着が制限されたためである。最後に、殺菌した土壌から得られた生存率と生長のデータを利用して、土壌の生物相が存在しない場合のシミュレーションを行ったところ、生物相がまったく存在しなければ植物種と機能の多様性が急速に減少し、現実にはありえないほど低下することがわかった。これら2つの研究は、Wim H. van der PuttenによるPerspectiveでも取り上げられている。
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