新しい研究で、腸内に住むある系統の酵母がクローン病を悪化させる可能性があり、この真菌が腸内で問題を起こさないようにすることで、一部の患者の炎症性腸疾患の症状を緩和できたことが報告された。現在、約160万人の米国人が炎症性腸疾患(IBD)に罹患しており、毎年70,000例もの新症例が診断されている。IBDの治療法はなく、多くの患者は抗炎症薬で症状を管理している。腸内細菌とIBDとの関係を明らかにした研究はいくつかあるが、クローン病(CD)患者の70%近くが酵母に対する免疫反応を起こしやすいにもかかわらず、腸内に住む他のタイプの微生物にはあまり注意が払われていなかった。今回、Tyson Chiaroらが、ある系統の出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)が腸炎マウスモデルの腸の損傷を悪化させたことを明らかにし、酵母が、マウスの腸内の尿酸産生量を増加させたことを突き止めた。酵母を保菌している動物にアロプリノール(尿酸を減少させる臨床薬)を投与したところ、腸疾患が回復した。酵母がヒトに同様な影響を及ぼすかどうかを明らかにするため、Chiaroらは健常ボランティア168名の血清を調べ、尿酸濃度とS. cerevisiaeに対する抗体の循環血中濃度が正の相関を示すことを明らかにした。CD患者の尿酸濃度と酵母に対する免疫反応を調べることで、より標的を絞った治療介入法に向けた情報が得られるとChiaroらは述べている。
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Journal
Science Translational Medicine