News Release

熊本都市圏の世帯不在率は28年間で41.3%から51.5%に10.2ポイント上昇

交通実態調査を利用した新たな分析方法により実証

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

Time spent out-of-home by household members

image: Example of out-of-home times for different family members. Households with every member out-of-home (HEMO) at 11 AM on any given day has increased by 10.2 percentage points over nearly 30 years in Kumamoto, Japan. view more 

Credit: Associate Professor Takuya Maruyama

ネット通販の拡大に伴い,近年,宅配便の取扱いが急増しています。一方で,日本国内での再配達は全体の2割に及んでおり,コスト(人件費・燃料費)や環境問題(CO2排出量の増加)の観点から,受取手の世帯単位での不在が課題となっています。しかし,世帯単位の不在の実態やその長期的な推移は十分に明らかにされていませんでした。

そこで,熊本大学の研究者らは交通実態調査であるパーソン・トリップ調査を活用し,世帯全員の「人の移動」データを,「世帯全員が外出している状態」という新たな視点で分析しました。パーソントリップ・調査は人の1日のすべての動きをとらえる調査で、「いつ」「どこから」「どこまで」「どのような人が」「どのような目的で」「どのような交通手段を利用して」移動したのかを調査します。交通計画等の検討の基礎資料として活用されます。

今回,1984年,1997年,2012年の熊本都市圏パーソン・トリップ調査を利用して個人不在率と世帯不在率を分析しました。このうち,1984年と2012年の結果を比較すると,個人不在率は,帰宅時間が遅くなっていることにともなう夕方の若干の増加のほかは,大きな変化はありません。その要因は,全世代平均よりも外出率が低い高齢者の割合の増加と,活動的で外出率の高い高齢者の増加による影響が相殺しているためと考察できます。一方,世帯不在率は,11時のピーク値で1984年の41.3%が2012年に51.5%となり10.2ポイント増加しています。その要因は,単身世帯の増加など平均世帯人数の減少,専業主婦世帯の減少,高齢者の外出率の増加などが挙げられます。本論文では,世帯不在率の増加を,これら要因別に分解する方法も提案しています。

移動を分析するための交通調査データであるパーソン・トリップ調査を,不在状態に着目して分析した研究例は,これまで国内外に存在していません。本研究では熊本都市圏の交通データを利用しましたが,本研究チームは,現在,国内外の交通データを利用した同様な分析も進めています。

研究を主導した円山教授は次のようにコメントしています。

「世帯全員が不在であることで生じる課題は, 宅配便の受取手の不在のほかにも,国勢調査等の訪問調査で調査員が対象世帯に面接しにくいという課題にも関連します。したがって,本研究は,効率的な再配達や訪問調査の方法の開発につながる成果といえます。また空き巣等の犯罪を抑止する方法の検討にも有用となると考えられます。」

本研究成果は、科学ジャーナル「Journal of Transport Geography」に2020年1月9日に掲載されました。

[Source]

Maruyama, T., & Fukahori, T. (2020). Households with every member out-of-home (HEMO): Comparison using the 1984, 1997, and 2012 household travel surveys in Kumamoto, Japan. Journal of Transport Geography, 82, 102632. doi:10.1016/j.jtrangeo.2019.102632

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