News Release

プラズマ推進機を用いたスペースデブリ除去法の原理実証に成功 ~無電極プラズマ推進機からの双方向プラズマ放出~

Peer-Reviewed Publication

Tohoku University

Plasma Thruster: New Space Debris Removal Technology (1 of 2)

image: A concept for space debris removal by bi-directional momentum ejection from a satellite. view more 

Credit: Kazunori Takahashi.

【発表のポイント】

・宇宙ゴミ(スペースデブリ)の除去を実現可能な無電極プラズマ推進機の動作を室内実験により実証

・通常は2台の推進機が必要とされるデブリ除去動作を、1台の推進機で実現可能

・1台の推進機で、衛星加速・減速・デブリ除去の全ての動作を実現可能

・無電極プラズマ推進機により大電力・長期間動作の実現が期待できる

【概要】

東北大学 大学院工学研究科 電気エネルギーシステム専攻 高橋和貴准教授らと、オーストラリア国立大学 Christine Charles教授 Rod W Boswell教授らの研究グループは、当該グループがこれまでに開発を進めてきた無電極プラズマ推進機 (ヘリコンプラズマスラスタ[参考文献1])を用いて、1台の推進機のみを用いたスペースデブリ除去法の室内原理実証実験に成功しました。

地球周回軌道上には、人類が宇宙開発を開始してから50年以上にわたって宇宙空間に放出してきた宇宙機や部品が、多数の宇宙ゴミ(スペースデブリ)となって高速で周回しています。これらのスペースデブリは年々増え続けるとともに7km/sを超える高速で運動しているため、人工衛星や宇宙ステーションに衝突すると甚大な被害をもたらす危険性があるとされています。したがって、スペースデブリを地球周回軌道から除去する技術の早急な開発が必要になっており、各国で様々な手法の提案・開発が進められています。

プラズマ流をデブリへ照射し減速させることで周回高度を下げ、最終的に大気圏へと突入させることで燃焼し、デブリ除去が可能になると期待されます。一方で、プラズマ流をデブリに向けて噴射した場合には、推進機はデブリとは逆方向に加速されるため、デブリとの距離を一定に保つことが不可能になります。そこでデブリとは逆方向へとプラズマを噴射して、衛星に働く力をキャンセルする必要があります。また、これまでに提案されてきたイオンエンジンを用いた手法では、エンジンを2台搭載する必要があり、また重さ数トンのデブリを除去するためには、数kW級の大電力推進機を搭載する必要があり、耐久性などの改善等が必要となります。

今回実証された手法では、長寿命・大電力プラズマ推進機として期待される無電極プラズマ推進機 (ヘリコンプラズマスラスタ) からの双方向プラズマ放出を実現・制御することで、図1(a)に示すデブリ除去動作が1台の推進機で可能であることを実証しました [図1(b)]。室内実験において、推進機に働く推力とデブリを模擬した物体に加わる力を同時に計測し、実際に推力がゼロの状態を維持しながらデブリ減速が可能であることを示しました[図1(c) debris removal mode]。また,外部磁場配位や燃料導入法によって推進機の加速や減速 [図1(c) thruster acceleration and deceleration modes] が可能であることも同時に実証され、デブリ除去衛星に必要な加速・減速・デブリ除去の全ての動作モードを実現可能であることを明らかにしました。

例えば、重さ数トンのデブリを100日程度で除去するためには,電力数kWで数10mNの推力が発生可能な推進機を搭載する必要があります。今回用いられた無電極プラズマ推進機では、これを満足しうる値が高橋准教授らの実験で得られていることからも[参考文献2]、スペースデブリ除去へ向けた技術として今後開発が進むことが期待されます。

本研究成果は、2018年9月26日(英国時間)にネイチャーパブリッシンググループの英国科学雑誌Scientific Reports(電子版)に掲載されました。

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