News Release

過冷却した液体中の分子構造は乱雑ではない

~結晶構造に似ていれば結晶へ、似ていなければガラスへ~

Peer-Reviewed Publication

Institute of Industrial Science, The University of Tokyo

Fraction of Crystalline Precursors

image: An increase in the glass-forming ability is signaled by a depression of the melting temperature towards its minimum at triple points. view more 

Credit: 2018 HAJIME TANAKA, INSTITUTE OF INDUSTRIAL SCIENCE, THE UNIVERSITY OF TOKYO

2種類の結晶と液体の三相が共存する、1成分液体の三重点や2成分系の共融点近傍では、経験的にガラスが形成されやすいことが知られ、ガラス材料を形成する際の、重要な経験則として広く知られていた。しかし、なぜ三重点や共融点近傍でガラス形成されやすいのかは長年の謎であった。東京大学 生産技術研究所の田中 肇 教授、ジョン・ルッソ 元特任助教(現ブリストル大学 講師)、ベニス大学のフラビオ・ロマーノ 准教授の研究グループは、理論・数値シミュレーションによりその謎に迫った。

これまで、液体の構造は乱雑で一様と考えられてきたが、融点以下では、何らかの方向秩序を持つ傾向があることが明らかとなった。このことは、液体の構造と結晶の構造が似ていると結晶化しやすく、一方、大きく異なると結晶化が阻害されガラスが形成されやすいという、極めて自然な原理の存在を意味する。また、共融点付近では、2種類の対称性の異なる結晶が競合する結果として、液体の構造が結晶に近い構造をとれず、液体と結晶の構造の差が最大化されるため、液体・結晶の界面エネルギーが大きくなる。このことが、共融点近傍でみられる高いガラス形成能の原因であることが明らかとなった。

この成果は、結晶化とガラス化の間に深い関係があることを示したばかりでなく、様々な物質のガラス形成能の意図的な制御に新しい道を拓いたという意味で、応用上のインパクトも大きいと期待される。

本成果は2018年5月11日(米国時間)にPhysical Review X誌で公開される。

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