News Release

非線形力学モデルによるパワーホップ現象の理論的メカニズム解明

Researchers at Tokyo University of Agriculture and Technology (TUAT) use nonlinear dynamics to understand the origin of potentially dangerous self-excited oscillations during tractor operation, which may increase safety in industrial situations

Peer-Reviewed Publication

Tokyo University of Agriculture and Technology

Power hop mechanism

image: Top: Draft load P [kN]: Middle: Tractive force acting on the front wheel Fd,1 [kN] and static friction limitation of the front tyres μfv,1 [kN]; Bottom: Tractive force acting on the front tyres Fd,2 [kN] and static friction limitation of the front tyres μfv,2 [kN]. view more 

Credit: FIGURE ADAPTED WITH PERMISSION FROM Biosystems Engineering, Volume 204, 2021, Pages 156-169. COPYRIGHT © 2021 Published by Elsevier Ltd on behalf of IAgrE.

東京農工大学大学院生物システム応用科学府食料エネルギーシステム科学専攻の渡辺将央大学院生(博士課程3年)、同大学院農学研究院の酒井憲司教授(農業環境工学部門)は、トラクタ作業時の異常振動であるパワーホップ現象の発生メカニズムを非線形力学モデルによって明らかにしました。本研究では、バウンシング、スティックスリップ、フリープレイを組み合わせた非線形力学モデルを開発し、パワーホップ発生の力学的なプロセスを解明しました。

本研究成果は、Biosystems Engineering(4月)に掲載されました。 論文名:Novel power hop model for an agricultural tractor with coupling bouncing, stick-slip, and free-play dynamics URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1537511021000088?dgcid=coauthor#kwrds0010 DOI:https://doi.org/10.1016/j.biosystemseng.2021.01.007

<研究体制>

酒井教授の研究グループでは、カリフォルニア大学デービス校Upadhyaya教授、ミュンヘン工科大Bernhardt教授、デリー大学Prasad教授らと連携し、農用トラクタの動力学及びドライブシミュレータの研究を行っています。本リリースはその成果の一部です。

<現状>

パワーホップ現象とは、農用トラクタの乾燥地・高重量けん引作業時に発生する自励振動です。パワーホップ発生時には、進行方向、鉛直方向、ピッチ方向に振動が顕在化し、タイヤがジャンプを繰り返す現象です。これらはトラクタ機体やオペレータへの損傷、土壌踏圧に伴う土壌劣化、横転事故の発生など様々な悪影響を及ぼします。食料生産の効率化や環境負荷の低減を実現するうえで、パワーホップ現象の理論的メカニズムの解明が求められていました。

<研究成果>

パワーホップ現象は、非線形現象に起因する自励振動です。そこで、本研究では、バウンシング、スティックスリップ、フリープレイの3非線形要素を組み合わせ、全く新たな非線形パワーホップモデルを開発しました。開発モデルを用いた数値シミュレーションを実行し、パワーホップ発生の力学的なプロセスを解明しました。下図は、その発生プロセスを示したシミュレーション結果です。図上段、中段、下段は、それぞれけん引抵抗P、前輪駆動力Fd,1、後輪駆動力Fd,2です。中段、下段には赤線で静摩擦限界も示してあります。シミュレーションでは、けん引抵抗Pを0 kNから10 kNまで単調増加させていきます。けん引抵抗Pの増加に応じて、前後輪駆動力Fd,1, Fd,2も増加していきます。しかし、時刻T1において静摩擦限界に達し、前輪でスリップが発生します。前輪スティックスリップにより、車体進行方向の振動が発生し、前後輪車軸荷重、駆動力の変動が引き起こされます。この変動により、後輪車軸荷重が瞬間的に低下し、時刻T2において後輪においてもスリップが発生します。前後輪におけるスティックスリップにより、更に振動が激しくなり、時刻T3におけるフリープレイ、時刻T4、T5における前後輪の離脱へと至ります。以上に示したプロセスがパワーホップの理論的な発生メカニズムであり、前輪でのスティックスリップ発生がパワーホップ発生に非常に重要であるとの知見を得ることができました。

<今後の展開>  

今後は開発した非線形力学モデルを用いて、パワーホップ抑制に向けた車体設計論・制御論の構築が必要となります。例えば前後輪の駆動力配分制御などを行うことでパワーホップの発生抑制が可能であると考えられます。また、非線形力学モデル開発に加えて、トラクタ・ドライブシミュレータを用いた仮想テストドライブの実施も行っています。今後は、本研究成果の仮想テストドライブへの応用等も行っていきます。

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