約10,000年前に肥沃な三日月地帯において農耕社会で小麦が栽培されるようになった際に小麦の遺伝子に変化が起きたことが、新しい研究によって明らかになった。この研究結果はパンの製造に使用する現代の小麦の特徴の理解を深める際に役立つと思われる。野生小麦の栽培植物化により小麦の特徴に変化が起きた。それは大半が種子休眠、穂の形態、粒の発達に関係している。たとえば、野生小麦の穂は成熟すると飛び散るが、栽培植物化された小麦の穂はどれも飛び散ることはなく、そのため収穫しやすい。Raz Avniらは今回、3次元遺伝子配列データとソフトウェアを使用して、野生の4倍体小麦であるリベットコムギ(Triticum turgidum)の14の染色体を再現した。次に、麦穂が飛び散らないようになった進化の根本にある遺伝子変化を突き止めるために、麦穂の飛び散りに関係のある遺伝子を栽培植物化された小麦と野生小麦とで比較した。Avniらは栽培植物化された小麦の中にその機能を失った遺伝子群を2つ発見した。機能を回復させたこれらの遺伝子群の1つで小麦を操作すると、その小麦は上部が脆く下部は脆くないという独特な穂を作った。この研究結果はこの2つの遺伝子群が飛び散りやすいという野生小麦の質の変化に一翼を担っていることを示している。
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