海草藻場と呼ばれる海草の密生地が、人間や海洋生物にとって有害な病原菌の数を最高で50%減少させることが、最新の研究によって示された。さらに、海草藻場付近のサンゴの有病率が約半分であることがわかった。今回の結果は、海草の生態系が人間及び他の生物に果たす重要な役割を浮き彫りにしている。海草は常に人口が集中する沿岸地域の水質の改善に役立つのみならず、世界的な食糧難に直面する中で急増する水産養殖の維持に重要な役割を果たすことができる。人の病原体を水から除去することは人間の健康にとって必要不可欠である。植物はその天然の殺生物剤によって非常に重要な役割を果たし、相当な経済効果をもたらすことが可能である。例えばニューヨーク市では近年80億ドルの浄水施設を建設する代わりに、集水地周辺の湿地帯の生息域を購入し保全することを決定したため、数10億ドルの資本金と運用費が節約されることになった。海草が天然の抗生物質を生成することは知られていたが、海洋から病原体を除去したり、海洋の病気を緩和したりする海草の能力は評価されてこなかった。今回Joleah Lambらはインドネシアの4つの島々の周辺海域で調査を行い、海草が海洋の病原体と病気に与える影響を評価した。今回の研究が行われた理由の1つとして、この場所において研究チームのメンバーの多くが体調を崩したことが挙げられる。著者らは、これらの島々周辺の海岸における腸球菌(Enterococcus)の個体数が、米国環境保護庁が推奨する人への健康リスクを引き起こす曝露レベルを10倍上回っていることを突き止めた。しかし、海草が存在する場所ではこの病原体のレベルは3分の1に低減されていることがわかった。さらなる研究により、海洋魚と無脊椎動物の病原体の個体数も海草がある場合に約50%低減されることがわかった。また、海草藻場付近に位置する8,000個以上の造礁サンゴの現地調査から、海草が近くにない場合と比較してサンゴの病気が約2分の1に低減されることも示された。海草藻場は1990年以来世界で毎年7%減少していると推定されており、本研究によって海草藻場の保全の重要性が注目されることを望んでいる、と著者らは語っている
###
Journal
Science