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筋萎縮性側索硬化症 (ALS)の早期診断法の試験的研究

Peer-Reviewed Publication

Goldschmidt Conference

血液や組織中の銅の濃度と同位体比を測定することにより、筋萎縮性側索硬化症 (ALS)の早期診断が可能となるかもしれないことが、新たな動物実験によって示された。現在のところ、この病気についてはバイオマーカーがなく、患者は発病するまで治療を開始することができなかった。この研究は、横浜で開催されるゴールドシュミット会議で発表される。

筋萎縮性側索硬化症は、運動神経疾患の一つであって、運動神経細胞が次第に変性しやがて死滅する神経変性疾患である。ルー・ゲーリック、スティーブ・ホーキングやデイヴィッド・ニーヴンなど何人かの有名人がこの筋萎縮性側索硬化症に罹り、人口の高齢化によって一般的な病気になりつつある。

この疾患の生化学的背景については、ほとんど解明されていない。生化学検査は遺伝的な関連がある場合にのみ有効で、例え治療法が開発されたとしても、患者は症状が現れるまで治療開始できないことを意味している。

現在、筋萎縮性側索硬化症に罹患したマウスと健康なマウスにおいて、組織中の微量の銅や鉄、亜鉛の濃度の経時的変化と疾患との関係を調べる予備的な研究が実施されている。オーストラリア・ニューサウスウエールズ州のウーロンゴン大学のアンソニー・ドウセット教授を中心とする研究グループは、筋萎縮性側索硬化症のマウスでは、脊髄と筋肉組織に含まれる銅と亜鉛の濃度が増加することを見出した。これらの濃度上昇は、症状が出現する前にみとめられるが、疾患の原因であるのか結果であるかは不明である。

加えて、筋萎縮性側索硬化症のマウスでは、血液中の銅の同位体比(65Cu/63Cu)に、健康なマウスとわずかながら違いが見られた。この違いは症状が現れるよりも前に出現していたので、この方法をヒトの検体に応用することによって、臨床症状が出現する前に疾患の存在を示す血液検査法の開発への道筋が開かれることが期待される。米国国立衛生研究所は、「筋萎縮性側索硬化症の発症は潜行性で症状は見過ごされがちであり、よって診断方法の開発が急務である」と述べている。

人口の高齢化によって、さまざまな神経変性疾患の患者が増えている。そのうちの一つである筋萎縮性側索硬化症は、運動神経細胞が次第に死滅して、麻痺と最終的には死に至る病である。米国では毎年約5600人がこの疾患と診断されており、英国では、5000人がこの疾患に罹患しているとともに暮らしている。

ドウセット教授は、「この研究はいまだ予備的で、特定の筋萎縮性側索硬化症モデルのマウスを対象に実施されたものであるが、この疾患におけるこのような病態研究としては最初のものであり、いつの日にか血液試料の同位体比分析によって、この病気の早期診断ができるようになるだろう」と述べている。 アリゾナ州立大学ハワード・ヒューズ医学研究所のアリエル・アンバー教授は、「地球化学的手法の生体医学への応用、特に高精度同位体比分析は、まだ未開拓の分野であり、この研究は刺激的な可能性を秘めている。」とコメントしている。

問い合わせ先 :

Professor Anthony Dosseto tonyd@uow.edu.au

Professor Ariel Anbar anbar@asu.edu

Goldschmidt Press Officer(日本語対応可): press@goldschmidt.info

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