News Release

特集号:火星探査機「MAVEN」の成果

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

今回のScience特集号では、火星探査機「MAVEN」(英語名:Mars Atmosphere and Volatile Evolution=火星大気・揮発進化)ミッションが特集されて、4件の興味深い論文が掲載されており、このミッションは火星の上層大気、電離層および磁気圏の研究を目的としている。このミッションから得られた画期的データによって、驚くべき事実が発見されるとともに、従前の理論および推論が変更されることになる。本号の表紙は実データを可視化した驚くべき画像であり、強力なコロナ質量放出が火星の磁場に爆撃のように降り注ぎ、炎のような巻きひげが赤い惑星・火星から放出されていることを示している。本表紙作成に関する特別記事では、画像作成技術者および研究者による作成方法が記述されている。

火星上層大気からの観測により、イオンの散逸率が太陽フレア発生時に上昇することが明らかになり、火星の歴史の初期において、大量の大気が散逸した可能性のあることが示唆された。Bruce Jakoskyらは、太陽が火星の大気に及ぼす影響を研究するために、2015年3月8日に発生した惑星間コロナ質量放出(ICME)、即ち太陽からのガスおよび磁気の爆発的な放出の際にMAVENによって収集されたデータを分析した。このICMEの際に、MAVEN搭載の火星磁場観測装置によって強力な磁気の回転が検出されており、最長5,000kmほどのロープ状の巻きひげに束ねられて宇宙空間に流出していた。一方、このICMEが火星を直撃した際に、大気のイオン化を観測する装置によって、急激なスパイクが検出されており、このICMEの影響を受けた磁場の磁束ロープに沿って火星のイオンが集められて、宇宙空間に放出されていた。これら磁束ロープの速度が、通常のものよりはるかに速く、およそ10倍になると推定された。イオン組成の分析からは、驚くほどのことではないが、O2+イオンおよびCO2+イオンが検出され、さらにO+イオンはより高高度の大気にまで放出されていた。太陽系の歴史の初期においてICMEのような現象が頻繁に発生した可能性があることから、太陽系の歴史の初期においては、イオンの散逸率が主に大規模な太陽活動によるものである可能性のあることをJakoskyらは示唆している。

2番目の論文はStephen Bougherらによるものであり、火星大気の熱圏および電離層の特性を特定するために、MAVENが行った火星上層大気への「ディップ」(近火点高度低下による火星上層大気での観測)のうちの2度の機会から得られた成果が述べられている。これらのディップにおいては、高度140kmから170kmの範囲において垂直方向に大きな温度勾配のあることがMAVENによって観測され、紫外線の勾配と一致していた。観測データから、二酸化炭素、アルゴンおよび二酸化窒素とともに、以前推定されていたよりも多くの酸素が安定的に混合していることが示唆された。高度200km近傍において、これら元素の密度はMAVENの軌道周回毎に大きく変動しており、Bougherらは、低高度で発生している重力波と風および小規模混合による過程との相互作用によって引き起こされている可能性を示唆した。さらに、磁場およびイオン層における変動から、太陽風に起因する磁場以外に、火星の地殻も磁場に寄与していることが示唆された。

3番目の論文では、火星の北半球におけるオーロラが研究されており、高度60kmと、現在までに他の惑星で確認されたオーロラよりも低高度の大気にまで及んでいた。太陽からエネルギー粒子が爆発的に放出された際に、MAVEN搭載の紫外線観測装置であるIUVS(Imaging Ultraviolet Spectrograph)によって、このオーロラが検出された。Nick Schneiderらは、火星で新たに発見されたオーロラが地球の北極光と同様な現象である点を指摘しており、電磁場に沿って大気に流入し、またはそこから流出する粒子が加速されることによって驚異的な視覚現象が創出されている。しかしながら、地球においては、この種のオーロラが南極および北極の磁気によるものであるのに対して、火星のオーロラは火星の地殻の残留磁場によるものであり、より均一で拡散したオーロラを発生させているとNick Schneiderらは考えている。

最後の論文はLaila Anderssonらによるものであり、高度150kmから1,000kmの範囲にある塵の検出について分析されている。相当量の粒子を惑星表面から150kmを超える高度に輸送することができるような物理過程は知られていないので、Anderssonらは、微粒子の大きさ(1~5nm)および粒子分布の均一性から、このような高高度において惑星間塵がMAVENによって検出されたと考えている。

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Article #9: "MAVEN observations of the response of Mars to an interplanetary coronal mass ejection," by B.M. Jakosky; F. Eparvier; R. Ergun; N. Schneider; D. Brain; L. Andersson; D. Baker; M. Chaffin; F. Crary; M. Crismani; J. Deighan; R. Dewey; Y. Dong; X. Fang; K. Fortier; C.M. Fowler; G. Holsclaw; S.K. Jain; W. McClintock; T. McEnulty; M. Morooka; W. Peterson; A.I.F. Stewart; A. Stiepen; E. Thiemann; T. Weber; T. Woods at University of Colorado, Boulder in Boulder, CO; J.M. Grebowsky; J. Connerney; P. Mahaffy; M. Benna; P. Chamberlin; G. Collinson; G. DiBraccio; M. Elrod; J. Espley; S. Guzewich at NASA/Goddard Space Flight Center in Greenbelt, MD. For a complete list of authors, see the manuscript.


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