News Release

宿主センサーAhRは感染症と闘うためにクオラムセンシングによるスパイ活動監視に関与する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

芳香族炭化水素受容体(AhR)は分子レベルの「スパイ活動」を利用することで、細菌性病原体が宿主への侵入を集合的に調整するために利用する細胞間伝達を「盗聴」して、感染が発生する前に宿主の免疫応答を発動させることが、新たな研究から示されている。この発見により、ヒト細胞、ゼブラフィッシュおよびマウスにおいて、宿主がこのような「スパイ防止活動」によって、非常に高頻度でみられる細菌性病原体である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の感染に対して、生理的に負担の大きい免疫防御をどのように微調整しているのかが明らかにされた。これにより、特定の病原体に対する特異的な新規抗菌活性物質への途が開かれる可能性がある。緑膿菌は至るところに存在し、多に類のない抵抗力を有して日和見感染を高頻度で引き起こす細菌であり、幅広く多様な植物や動物で感染症の原因となる。ヒトにおいては、緑膿菌は一連の疾患の原因となっており、これには幾つかの病院獲得感染症も含まれる。そうした感染症は、特に免疫系の機能が低下した患者では、重篤な、また時に致死的となる転帰をもたらす。しかし、緑膿菌が他に類をみないほど治療の困難な感染症を引き起こすのは、その強力な抗菌薬耐性のためである。多くの病原体は「クオラムセンシング(QS)」という、小分子レベルの細胞間伝達メカニズムを利用しており、これによって細菌は、感染過程を通して変化していく環境条件に迅速に適応し、集合的な挙動を調整することができる。宿主のセンサーであるAhRはQS分子を認識することが知られているが、ダイナミックな感染過程に対する監視と応答においてどのような役割を果たしているのかは、あまり明らかでない。今回Pedro Moura-Alvesらは、in vitroおよびin vivoの両方のモデルを用いて、緑膿菌の感染時に発現されるQS分子がAhRに結合し、異なるQS分子の相対的な量の差に応じて異なる仕方でAhRの活性を調節することを示した。Moura-Alvesらによれば、宿主において行われるこのような定量的評価により、細菌集団の規模を感知し、感染過程の変化を監視することで、感染の脅威の重大さに応じて最も適切な防御メカニズムを発動させるという応答が可能になるという。

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