News Release

東アフリカで環境・技術が大きく変化したのと同時にホモ・サピエンスが進化した証拠

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

3つの新しい研究では、中石器時代より前の約30万年前に東アフリカで環境・生態系・技術が大きく変化し、それと同時期に解剖学的現生人類が進化したことに注目している。これらの研究結果から、環境要因によって人間の行動の変化に拍車がかかり、広範囲に及ぶ移住や交易、新しい道具作りが促進された可能性が示唆された。1つ目のRick Pottsらによる研究では、ケニアのオロルゲサイリー盆地で採取した保存状態のよい堆積物を分析したところ、80万年前ごろからこの地域は何度も変化し、それが初期人類の行動に大きな進化をもたらした可能性があることがわかった。堆積物から、80万年前ごろまでオロルゲサイリー盆地の大部分は氾濫原であり、湿った状態と乾いた状態を頻繁に繰り返していたことが示唆された。さらに、土壌試料の炭素同位体から、この地域が広大な草原に変貌したことも示唆された。その当時、哺乳動物相では劇的な交代が起こり、大型で特殊化した草食動物の系統(一部のゾウやウマなど)の多くが絶滅し、その代わりに体が小さな同類の分類群が現れた。著者らはこれも気候変動を示す証拠だと述べている。こうした気候変動によって狩猟採集民は食べ物を入手できるかどうかが予測できなくなり、その結果として長距離移動や情報収集、社会資源交換ネットワークへの注力が促進されたという。こうした変化が起きたことは考古学的証拠から明らかだ、とPottsらは述べている。以前は道具を作るのに使用した岩石の98%が、オロルゲサイリー盆地の狭い一画(わずか5キロメートルの範囲)から採れたものだったが、約32万年前までに道具は遠く離れた地域で採れた黒曜石に取って代わられた。これは長距離移動と交易の可能性を示すものである。この研究結果は、ホモ・サピエンスの出現時またはその前後におけるアフリカのヒト族の行動に関して、大幅な見直しを迫るものである、と著者らは述べている。

Alison Brooksらによる別の研究では、オロルゲサイリー盆地から出土した人工物(武器や顔料など)の詳細を明らかにしている。こうした人工物は古代の技術や交易の解明につながるものである。注目すべきことに、約50万年前から29万8000年前までの5つの遺跡を調べたところ、古い遺跡と新しい遺跡とで道具の種類に明確な違いがあることがわかった。遺跡が古いほど出土する武器は手斧のように大きくて重く、その地域で採れる火山岩でできていたのに対して、新しい遺跡の1つで見つかった武器は、はるかに小さく洗練された別の様式のものだった。新しい時代に作られた道具の約42%が地元では採れない黒曜石でできていた、と著者らは指摘している。さらに、約4万6000個の黒曜石剥片がその遺跡で発掘されていることから、黒曜石が完成した人工物として持ち込まれたのではなく、原料として持ち込まれた後に現地で加工されたことが示唆された。加えて、2番目に多い外来の原料は緑色・茶色・白色のチャート(有色岩石)であることもわかった。特に興味深いのは、穴が2つ開けられた黄土顔料の塊であり、明らかに手の加えられた顔料としては既知で最古のものである、と著者らは述べている。また、外来の鮮紅色や黒色の岩石を取り寄せることは、その強烈な色ゆえに高く評価され、身元や地位を象徴的に伝えるものとして使用された可能性がある、とも指摘している。最後に、Brooksらは遺跡周辺で見つかった動物遺骸についても論じており、初期の現生人類が小動物をある程度常食としていた可能性があることを示唆している。

3つ目の研究では、Alan Deinoらがオロルゲサイリー盆地内の遺跡について詳細な年代決定を行い、アシュール期から中石器時代の間に決定的な転換期があったことを見出した。彼らはアルゴンやウランを使った年代決定法で、盆地内にある複数の遺跡の年代を求めた。その結果、古いアシュール期の遺跡ほど道具は大きく、32万年前ごろからアシュール期のような道具はなくなったことが確認された、と著者らは報告している。またこれらの研究結果から、東アフリカでこれまでに確認された中石器時代の人工物について、最古の宝庫が突き止められたと述べている。

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