新たな研究により、人気のある糖尿病治療薬の標的をコードする遺伝子の変異は、糖尿病治療薬に共通する安全性の懸念である心疾患に対する保護作用を有することが示された。50,000人を超える人々のゲノムデータを利用したこの研究は、その遺伝子を標的とする薬物が、これまで考えられていたのとは異なり、必ずしも心血管リスクの上昇を伴うわけではないことを示唆している。著者らによれば、この研究結果は、ある薬物で生じうる副作用(この場合は予期せぬベネフィット)を、その開発段階のより早期で予測するうえで遺伝学が貴重なツールとなる可能性があり、それにより臨床試験が加速化され、起こり得る有害な薬物から患者を守ることになる、という考え方のさらなる裏付けとなる。薬物の安全性は前臨床研究や臨床研究において厳密に検討されるが、一部の副作用は、その薬物が市場に出て、一般の使用者から報告されるまで発見されない場合がある。薬物関連のリスクに関するヒントを得るためにゲノム研究を利用して、Robert Scottらは、承認済みまたは開発中の糖尿病治療薬が標的としている蛋白質をコードする6つの遺伝子に関する大規模なシーケンシングデータをくまなく調べた。その結果、研究者らは、インスリン分泌を刺激するために現在の糖尿病治療薬によって活性化される受容体で、2型糖尿病のリスクを低下させるGLP1Rの遺伝子変異を発見した。そのアレルは冠動脈性心疾患のリスクと関連しておらず、実際はこのリスクを低下させるようであり、予期しないベネフィットが明らかにされた。これらの結果を合わせると、同じ遺伝子を標的とする治療薬の作用を反映する遺伝子変異を調べることで、いかにそれらの治療薬の副作用を発見する助けとなり得るかが示されている。GLP1Rを標的とする治療薬の心血管安全性を評価する現在進行中の複数の試験は、今回の研究結果に関するさらなる洞察を提供してくれる可能性がある。
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Journal
Science Translational Medicine