新たな研究から、植込み式のソフトロボットデバイスにより、心筋の自然な動きと同様に、機能低下した心臓をやさしく圧迫して血液を送り出すのを助けられることが示された。シリコンをベースとしたこのデバイスは、加圧された空気で満たされると膨張したり弛緩したりして、心不全を対象とした補助デバイスを開発するための有望な戦略となる可能性がある。心不全は重篤な疾患で、世界中で4,100万人が罹患しており、米国では5百万人以上が罹患して、国内で年に推定320億ドルが費やされている。現在、寿命を延長させる治療として心室補助装置(VAD)が用いられているが、この装置は常に血液と接触しており、患者にとって感染症、血液凝固および脳卒中のリスクを高め、長期の抗凝固薬療法が必要となる。VADはまた、心臓の正常な形態とその収縮機序に影響を及ぼす。より効果的なデバイスの開発を目指して、Ellen Rochaらは、正常な心筋の動きを妨げることなく、心筋の動きを忠実に再現することで心機能を高めることを目的とした新規デバイスを開発した。ex vivo試験では、このデバイスはブタの心臓の表面にうまく適合し、自然な心臓の動きと同調した。またこのデバイスにより、生きた2匹のブタにおいて、急性の心停止後に正常な血流が回復した。著者らは、体外移植されたブタ心臓の右室または左室のいずれかを選択的にねじったり圧迫したりすることで、このデバイスを「微調整」することに成功した。慢性心不全では多くの場合、心臓の一部のみが侵されるため、この所見は重要なものである。さらなる研究により、このデバイスは個々の患者のニーズに応じて調節することで、心臓のより良いリハビリテーションや回復を目指すことができるだろう。この技術を体内への長期の植込みに適したものにするには今後の研究が必要であると、著者らは述べている。
###
Journal
Science Translational Medicine