News Release

抗菌効果を自在に活性化できるナノ粒子を開発

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

金コート銀ナノ粒子の抗菌活性

image: 金でコートした銀ナノ粒子にパルスレーザーを照射すると、球形に変化し、強力な抗菌作用を持つ銀イオンが放出される view more 

Credit: Dr. Takuro Niidome

銀ナノ粒子は優れた抗菌特性を有しており、抗生物質耐性菌に対抗できる有力な抗菌物質と考えられています。銀ナノ粒子は細菌の酵素を阻害し、また、細胞膜構造を不安定にさせることで、細菌の増殖を阻害し、細胞死させます。ところが、銀ナノ粒子は凝集しやすく、抗菌活性が低下してしまうことがわかっており、そこで、熊本大学、慶應義塾大学、大日本塗料株式会社の共同研究グループは、凝集しないよう銀ナノ粒子を金でコーティングしました。しかし、銀が露出しないために抗菌効果が落ちてしまいます。そこで、ナノ粒子としての高い分散安定性と抗菌特性の両方を維持する方法について研究を進めました。

研究の結果、金でコートした銀ナノ粒子にパルスレーザーを照射すると、これらの問題点が解決することが判明しました。金コートした三角プレート状の銀ナノ粒子にパルスレーザーを照射すると、パルスレーザーの熱によって金属が溶け、球形に変化します。すなわち、照射前はやや丸みを帯びた三角プレート状の粒子が、照射後はほぼ球形(球形率94%)にまで変わりました。さらに、銀と金の比率は、22:1から4.5:1になりました。これは、金コーティングの空隙から銀の一部がイオン化して銀イオンになり、外に放出されるためと考えられます。銀イオンは銀同様、抗菌効果を示すので、パルスレーザーを照射する過程が抗菌活性発現の鍵となるのです。

研究を主導した熊本大学大学院先端科学研究部の新留琢郎教授は次のようにコメントしています。「私たちは、銀ナノ粒子の抗菌特性を自在に活性化する方法を開発しました。パルスレーザー照射前の金コート銀ナノ粒子には抗菌特性がほとんどありませんが、照射後は抗菌効果が有意に増加することが実験で明らかになりました。今後、抗生物質耐性の細菌に対処する方法として、本技術をさらに発展させたいと考えています。」

パルスレーザーを照射した金コート銀ナノ粒子は、大腸菌に対して非常に効果があることもわかりました(菌生存率0%)。銀ナノ粒子も同様に抗菌効果がありますが、金コート銀ナノ粒子は必要に応じて抗菌効果が活性化するという利点があるため、無コートの銀ナノ粒子のように凝集して抗菌効果が失われてしまうといった傾向はありませんでした。

本研究成果は平成29年10月11日、科学雑誌「the Royal Society of Chemistry journal Nanoscale」に掲載されました。

###

[Reference]

Kyaw, K., Ichimaru, H., Kawagoe, T., Terakawa, M., Miyazawa, Y., Mizoguchi, D., Tsushida, M, Niidome, T. (2017). Effects of pulsed laser irradiation on gold-coated silver nanoplates and their antibacterial activity. Nanoscale. doi:10.1039/c7nr06513b


Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.