植物細胞から損傷した葉緑体を選別して取り除いているタンパク質が特定され、植物が光合成の過程で「クリーンな作業環境」を維持する仕組みが明らかになった。葉緑体は光を植物が利用可能なエネルギーに変換する際に重要な役割を果たしているが、これらのエネルギー生成の場が損傷を受けていると有害物質が放出される。損傷が検知されるとすぐに、葉緑体の機能とストレス適応に関係する遺伝子に信号が送られる。一部のエビデンスにより、プロトポルフィリン-IX(PROTO)をヘムに変換する酵素である色素体フェロキラターゼ1および2(FC1およびFC2)が個々の葉緑体の質の管理に一翼を担っている可能性が示されている。PROTOは酸素を発生する光増感分子で、細胞内で酸化ストレスを増大させる。そこでJesse WoodsonらはFC1かFC2のいずれかの酵素が欠乏している2つの変異体植物の株を作り、それら植物にさまざまな量の光を当て、葉緑体の変化を観察した。長時間暗い場所に置いた後に突然光に当てた後、FC1変異株と対照群は緑色になれたが、FC2変異株は緑色になれなかった。顕微鏡で詳しく観察すると、このFC2株の葉緑体は損傷していることが分かった。また、PROTOも蓄積しており、その結果、酸素の量が増え、酸化ストレスに応答する遺伝子も発現していた。WoodsonらはFC2株内にこういった影響に対抗すると考えられる変異が他にもないか調べ、細胞の発生と死に関与する調節タンパク質である植物U-Box 4(PUB4)型E3ユビキチンリガーゼを突き止めた。PUB4の変異も見られるFC2株を調べた結果、PROTOと酸素は蓄積しているものの葉緑体の分解は見られず、このことはPUB4が葉緑体の分解の信号伝達に直接的な役割を果たしていることを示している。Woodsonらは健康な植物を詳しく調査することでPUB4が葉緑体の質の管理に選択的役割を果たしていることを発見し、酸化ストレスの軽減におけるこのタンパク質の役割を強調している。
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Article #12: "Ubiquitin facilitates a quality-control pathway that removes damaged chloroplasts," by J.D. Woodson; M.S. Joens; A.B. Sinson; J. Gilkerson; J.A. Fitzpatrick; J. Chory at The Salk Institute in La Jolla, CA; A.B. Sinson at University of California, San Diego in La Jolla, CA; J. Gilkerson at Howard Hughes Medical Institute in La Jolla, CA; P.A. Salom�; D. Weigel at Max Planck Institute for Developmental Biology in T�bingen, Germany; M.S. Joens; J.A. Fitzpatrick at Washington University School of Medicine in St. Louis, MO; J. Gilkerson at Shepherd University in Shepherdstown, WV; P.A. Salom� at University of California, Los Angeles in Los Angeles.
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