News Release

解明された:腸内微生物に由来する発癌性のDNA破壊遺伝毒性物質

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

ヒトの腸内に常住する多くの微生物の中で、大腸菌(Escherichia coli)の一部に、コリバクチン(colibactin)という「弾頭」のような遺伝毒性物質を産生する株があることが、新たな研究により示されている。この物質には周囲にある細胞のDNAを標的として破壊する能力があり、発癌作用を有する。この結果は、大腸癌のリスクを評価するためのバイオマーカー候補を同定するものである。コリバクチンは、生合成能力を有するpks islandとして知られる遺伝子クラスターを有する大腸菌の産生物と考えられる。この遺伝毒性物質に曝露されると、哺乳類の細胞で重大な遺伝子損傷を引き起こすことが示されている。この時、これらの細胞に含まれるDNAのストランドが粉々に破壊され、遺伝子変異と腫瘍増殖が促進される。さらにこれまでの研究から、pks陽性大腸菌は大腸癌を含む大腸の病態を有する患者において高頻度で認められることが示されている。しかし著者らによれば、ヒトの癌と関係するにもかかわらず、この遺伝毒性物質の科学的性質やその発癌促進作用について、またどのようにして細胞内に侵入して細胞を破壊するのかについては、この10年間にわたり明らかにされないままであった。この遺伝毒性物質は不安定であるため、これを単離することは困難であった。ほとんどの研究は、コリバクチンの安定した前駆物質を同定すること、および合成した「コリバクチンmimics(類似物質)」をin vitroで用いることに限られていた。今回Matthew Wilsonらは、新規に開発されたノンターゲットの質量分析法に基づくアプローチであるLC-MS3 DNA付加体定量分析法を用いて、生きたヒト細胞においてコリバクチンによるDNA損傷後に残された2つの化学産生物を同定した。Wilsonらによれば、今回発見されたコリバクチン付加体は、シクロプロパンが「弾頭」の役割を担って引き起こすアルキル化が、この遺伝毒性物質によるDNA破壊の基礎にあることを示す、初の直接的エビデンスを提供したという。さらに今回のデータからこの付加体は、pks陽性大腸菌への曝露を示すバイオマーカーであり、大腸癌の予後を明らかにする上での情報となり得ることが示唆される。関連するPerspectiveでRachel M. BleichとJanelle C. Arthurはこう記している。「この研究は、コリバクチンの化学的性質とその発癌作用機序を理解する上での、メカニズム解明における重要な進歩である」。

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