News Release

ハイブリッド量子技術による核磁気共鳴のレーザー光検出法を開発

化学分析や磁気共鳴画像(MRI)診断の高感度化に期待

Peer-Reviewed Publication

Kyoto University

The Silicon Nitride Membrane

image: This is the material linking the three electro-mechano-optical systems. view more 

Credit: Kyoto University / Kazuyuki Takeda

 NMRは、物質中の原子核が持つミクロな「磁石」が、物質の性質や構造を反映して振る舞う様子を捉えて物質を分析する有用な手段で、化学分析に威力を発揮しているだけではなく、NMRの原理を応用したMRI診断は医療現場に欠かせないツールとなっています。NMRの信号は、原子核内の磁石の運動により発生する電気信号を増幅することで得られます。しかし、電気信号を増幅する際には必然的に新たな雑音が付け加わり、測定の感度が制限されてしまいます。

 武田和行 京都大学大学院理学研究科准教授、宇佐見康二 東京大学先端科学技術研究センター准教授らの研究グループは、電気-機械-光ハイブリッド量子技術(異なる2つ以上の量子系を統合させ1つの量子系としてみなし、量子情報を測定・制御する技術)を用いて、高周波電気信号をレーザー光へ変換することができる独自のNMR実験システムを開発して、薄膜機械振動子を介したNMR信号の光検出に初めて成功しました。今回のレーザー光NMR信号検出法は、通常のNMRやMRIで測定・撮像されている対象にそのまま適用可能で、かつ信号の受信過程における雑音の混入を極めて少なくできるため、化学分析およびMRI診断の高感度化に役立つことが期待されます。

 武田准教授は、「核磁気共鳴(NMR)は数ある分光法の中でも最も周波数の低い、ラジオ周波数の領域の電磁波信号を扱います。今回私たちは、NMR信号を、周波数を7桁(1,000万倍!)アップコンバートして光に変換することに成功しました。そのカラクリは、あたかもある仕掛けが作動し、それが次の仕掛けのトリガーになり、この連鎖によって最終的に何かを達成するルーブ・ゴールドバーグ・マシン(あるいはピタゴラ装置とも呼ばれる)のようです。

 「私たちの研究の場合、物質中の原子核により電気回路に信号が生じ、電気信号が薄膜を揺さぶり、揺さぶられた薄膜は実は鏡にもなっていて、レーザー光の跳ね返り具合に影響を与える、というプロセスでラジオ周波数のNMR信号が光に変換されます。一連の現象の背後には量子力学・電磁気学・力学・光学的プロセスがあり、しかも光に化けた信号には測定物質の分子構造やダイナミクスなどの化学的情報を含ませることもできます。また、この研究をMRIに応用できれば光変換された信号を用いて非破壊の画像診断もできるはずです。

 「異分野の共同研究者が力を結集させて未開の境界領域を攻めた点において、苦しくも大変楽しい研究活動ができました。共同研究者のみなさん、特に東大・宇佐見さんに感謝です!

 「さて、この研究成果が果たしてルーブ・ゴールドバーグ・マシンのように、故意に無駄に長い道のりを経由して信号を伝達しているだけなのか?それとももっと深淵な科学的な示唆を含んでいるのか?まだ本当の答えは出ていませんが後者であると信じて、もうしばらく遊んでみようと思います」とコメントしています。

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