News Release

閉経後の女性において、肺癌に関連する肺組織中に高濃度のエストロゲンが存在

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

エストロンおよびエストラジオール濃度

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肺末梢部の非癌領域の組織中におけるエストロンとエストラジオール濃度を、単一肺癌組織(コントロール)とSMLA患者とで液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析を用いて比較分析したもの。マン・ホイットニー統計分析においてP値0.05と有意差が認められた。

http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0160910 view more 

Credit: Assistant Professor Koei Ikeda

画像診断の進化のおかげで、同時重複性の肺腺癌(SMLA)の検出率が増加しています。日本人女性におけるSMLAの患者数は、国内の喫煙率が10%未満と低いにもかかわらず増加の傾向にあります。このことはSMLAの発症に喫煙以外の要因があることを示唆しており、実際に、エストロゲンが肺癌の発症に関与していることが研究によって明らかになってきています。

閉経後の女性における、肺組織中のエストロゲンと多重性原発性肺癌との関連を調べる研究が熊本大学の研究グループによって行われました。SMLAと診断された閉経後女性の癌に冒されていない肺末梢部組織におけるエストロゲン濃度と、単一の肺腺癌(AD)と診断された女性の同組織におけるエストロゲン濃度とを比較しました。調査したのは、同じような臨床的特徴を持つSMLAの患者30名とADの患者79名です。

両群の非肺癌領域の組織で、閉経後女性に見られる主要なエストロゲンであるエストロン(E1)と、生殖可能期間中の主要な女性ホルモンであるエストラジオール(E2)を調べたところ、いずれのエストロゲンもSMLAの患者群で高い濃度であることが分かりました。また、いずれの群でもどちらのエストロゲンも、年齢、喫煙状況、癌の進行度、家族の癌罹患歴、上皮成長因子受容体(EGFR)の変異状態とは相関がありませんでした。

さらに、以前から調べていたCYP19A1遺伝子中の単一ヌクレオチド多型(SNP)であるrs3764221の対立遺伝子が、SMLAのリスクに関連していることも確認できました。肺末梢部においてこの遺伝子が特に局所的に発現しているということは、同じ部分でのエストロゲン濃度と強い相関性があります。CYP19AのSNPがエストロゲンの増加を引き起こしている可能性があります。研究を主導した池田公英助教は、本研究が今後SNPによって引き起こされるエストロゲン濃度を低下させるような遺伝子治療の開発につながるもの期待しています。

本研究成果の論文はPLOS ONEにてご覧いただくことが出来ます。

http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0160910

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[Citation]

Ikeda K, Shiraishi K, Yoshida A, Shinchi Y, Sanada M, Motooka Y, et al. (2016) Synchronous Multiple Lung Adenocarcinomas: Estrogen Concentration in Peripheral Lung. PLoS ONE 11(8): e0160910. doi:10.1371/journal.pone.0160910


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