News Release

ヒト白血球抗原(HLA)ハプロタイプによるHIV-1抑制機構の解明

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

image: The HLA-B*52:01 and -C*12:02-restricted CTLs strongly suppress HIV-1 replication resulting in slower disease progression. In contrast, the HLA-B*52:01-C*12:02 haplotypes are susceptible to autoimmune diseases. view more 

Credit: Professor Masafumi Takiguchi

日本人の約20%は、HIV-1増殖抑制に関連したHLA-B*52:01およびHLA-C*12:02遺伝子を、片方の親から継承したハプロタイプとして有しています。一方で、このハプロタイプは潰瘍性大腸炎や高安動脈炎などの自己免疫疾患(自己の免疫が自己の細胞や組織を攻撃する疾患)にも関与していることが知られています。

熊本大学エイズ学研究センターの研究グループは、これまでの研究でHLA-B*52:01-C*12:02ハプロタイプを有するHIV-1感染患者では、このハプロタイプを持たない患者と比較して血漿中ウイルス量(pVL)が低く、免疫応答に重要な細胞であるCD4陽性T細胞数が有意に多いことを明らかにしました。またその後の研究で、HLA-B*52:01に拘束されるHIV-1特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が体内で誘導されることによってHIV-1増殖が抑制されることも明らかにしました。

さらに、同研究グループはナチュラルキラー細胞に関する研究で、HLA-C*12:02とKIR2LD2(HLA-C*12:02の受容体)の両方を有しているHIV-1感染患者は、どちらか片方しか有していない、もしくは両方有していない感染患者よりも血漿中ウイルス量が低いことを明らかにし、HLA-CもHLA-Bと同様にHIV-1の発症遅延に関与していることが示されました。ところが、HLA-B*52:01とHLA-C*12:02はきわめて強いハプロタイプを形成しているため、どちらのHLAに拘束されるCTLがHIV-1ウイルス制御に影響しているのかを明らかにするのは困難でした。

この課題を解決するため、研究者らはHLA-C*12:02拘束性CTLが認識する抗原の特定部分(T細胞エピトープ)を検索し、それらのエピトープが強く免疫応答を誘導するものであるか解析しました。その結果、HLA-C*12:02を有する日本人HIV-1感染者群において、Nef MY9およびPol IY11を、最も強く免疫反応を引き起こすエピトープとして同定し、HIV-1感染者においてHLA-CがHLA-BのHIV-1増殖抑制機能を補っていることが明らかとなりました。

研究を主導した滝口雅文教授は次のようにコメントしています。

「残念ながら、このHLA-B*52:01-C*12:02ハプロタイプは、日本人において複数の自己免疫疾患と関連していることが知られています。おそらく免疫応答が強すぎて、自己免疫疾患を引き起こしてしまうという負の面が出ているのかもしれません。今回HLA-B*52:01-C*12:02ハプロタイプはHIV-1増殖を制御することができるという良い面を明らかにできました。この研究は、複雑なAIDS発症機序の解明に大きく貢献するだけではなく、他の感染症の研究への進展も期待されます。」

本研究成果は、学術雑誌「The Journal of Infectious Diseases」にて平成29年9月14日に掲載されました。

[Source]

Chikata, T., Murakoshi, H., Koyanagi, M., Honda, K., Gatanaga, H., Oka, S., & Takiguchi, M. (2017). Control of HIV-1 by an HLA-B*52:01-C*12:02 protective haplotype. The Journal of Infectious Diseases. doi:10.1093/infdis/jix483


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