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遺伝的適応によってイネは長期の洪水に耐えられるようになる

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

洪水で水位が上がると、一部のイネ品種は水没を避けるために急速に背を伸ばす。新しい研究によって、イネの深水適応に関与している鍵遺伝子「SD1(SEMIDWARF1)」が特定された。まさにこの遺伝子の変異体こそ、イネに「緑の革命」をもたらした遺伝子である。洪水多発地域の浮イネという品種は、茎を急速に伸ばして葉を水面上に出すことで、数ヵ月にわたる浸水に耐えることができる。植物ホルモンであるエチレンとジベレリン(GA)が数メートルもの急生長を誘発すると考えられていたが、その遺伝機構や適応の起源はよくわかっていなかった。黒羽剛らは、アジアイネと浮イネの品種を選んでゲノムワイド関連研究を行うことにより、冠水誘導性の生長を調節している因子を特定し、これまで知られていなかった「エチレン‐ジベレリンリレー」という分子機構を明らかにした。冠水時には気体の植物ホルモンであるエチレンが植物内に蓄積され、それによってSD1を誘発する転写因子の発現が誘導されると、GAの生成量が増加し、GAの1種であるGA4が茎の急速な生長を促進する。進化解析の結果、この適応がイネの野生原種に既に存在していた遺伝的変異に端を発していることと、バングラデシュではモンスーンの季節に対応するために栽培化の際に選択の対象になったことが明らかになった。黒羽らの研究は、SD1遺伝子が人間の選出した適応戦略に加担したことで、さまざまな方法による稲作が可能になったことを示している。野性イネの遺伝的変異がさらに特定されれば、有用な適応策が得られ、とりわけ気候変動によって天候が激変しているいま、現代に即した新品種への改良が可能になるだろう。

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