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Credit: Insilico Medicine
香港 — インシリコ・メディシンは、生成化学および生物学を初めて結びつけ、特発性肺線維症(IPF)の治療に関する新たな前臨床候補を特定し、複数のヒト細胞および動物モデル実験で証明することにより、人工知能(AI)および創薬における画期的な進歩を証明しました。IPFは、肺、肝臓、腎臓等の複数の臓器およびさまざまな疾患に関連することが多く、世界中の数十万人の患者に影響を与える幅広い医療ニーズを示します。
インシリコ・メディシンの創設者でありCEOのアレックス・ジャーヴォロンコフ博士は、以下のように述べています。
「ディープラーニングの革命の頂点は、ディープラーニングシステムが画像認識において人間よりも優れたパフォーマンスを発揮しはじめ、敵対的生成ネットワークが発明された2014年でした。そして、インシリコ・メディシンが設立した年でもあります。2016年には、実験的検証とともにオミクスデータからディープラーニングシステムが新たな生物学的標的を特定できることを実証しました。2017年から2019年にかけては、生成AIによりヒト細胞や動物内で有効な新たな分子の発見および設計が可能であることを実証してきました。しかしながら、大きな疑問が残っています。疾患内でまた実証されていない新規ターゲットのための新分子をAIは設計できるのか。そして今、我々は生物学および化学を結びつけ、新規ーゲットの前臨床新薬候補に成功し、これから、複雑で危険を伴う臨床試験に取り入れこと目指してます。
私の知る限り、これはAIが新たな標的を特定し、非常に広範囲にわたる適応疾患の前臨床新薬候補を設計した初めてのケースです。我々の究極のミッションとしては、老化問題を解決することです。そのために、我々は他の慢性疾患における人間生物学の理解および操作に役立つ多くのAI技術を有する必要があります。」
同社はまた、メディシロンの元生物学・化学担当上級副社長およびGSKの元化学責任者であり、2月に最高科学責任者としてインシリコ・メディシンに加わったFeng Ren博士が率いる、20名以上の製薬の専門家および開発者で構成されるチームを上海で立ち上げることを発表しました。このチームは、AIにより発見された医薬品を臨床試験に取り入れ、前臨床研究の幅広いポートフォリオの作成を担当します。
さらに、インシリコ・メディシンは限られた数の新規ターゲットの開発を目的として財源を有し、Pharma.AIソフトウェアスイートを介して製薬およびバイオテクノロジー企業がターゲットの発見および生成化学システムを利用できるようにしました。PandaOmicsのターゲット発見システムは、サービスとしてのソフトウェアとして利用可能です。また、Chemistry42の小分子生成化学プラットフォームは、2020年9月以降オンプレミス展開のための利用が可能です。現時点で、いくつかの最先端の製薬企業がChemistry42を利用しています。PandaOmicsは、新たなターゲットの発見を専門とする複数の製薬企業および研究機関によって導入されていました。
前臨床候補を特定するため、インシリコ・メディシンは、AIによって発見された線維症のための全く新しい20のターゲットから開始し、特にIPFに対応できるようターゲットを絞り込みました。その後、新規ターゲットを選択的に阻害する一連の新分子を生成しました。それらの分子は次の点を満たしている必要がありました。それは、選択的で生物学的に利用でき、また、代謝が安定しており、経口投薬が可能であること。そして、安全であり、他の優れた薬品の特性を備えていることです。加えて、インシリコ・メディシンは、IPFにおいて第II相臨床試験が成功する可能性が高いことを予測しました。分子は、まず構造ベースのドラッグデザイン(SBDD)生成化学アプローチを採用するインシリコ・メディシンのChemistry42のシステムを利用して生成されました。その後、ヒト細胞および動物のモデルで実験されました。そして、追加のプロパティを最適化するため、分子はリガンドベースのドラッグデザイン(LBDD)を利用して再設計され、再びヒト細胞および動物のモデルでテストが行われました。線維症を専門とする内外の卓越した医薬品開発者によって構成される大規模なチームによるレビュー後、前臨床新薬候補が指定され、臨床試験申請(IND)対応の実験が開始されました。
インシリコ・メディシンは、ターゲット仮説から前臨床候補の選択において、これまでの研究室における実験を通じ、ターゲットの判明、分子の生成および検証を18か月未満で完成しました。また、80個以下の小分子の合成および実験に加え、IPFに180万ドル、その他線維性疾患に約80万ドルを充てました。
前臨床新薬候補は、前例のない作用機序(MOA)を備えた、新たなターゲットの画期的医薬品である小分子阻害薬です。特発性肺線維症の前臨床試験において、in vitroおよびin vivoの両方で素晴らしい有効性を示し、14日間の反復マウス用量範囲試験で優れた安全性のプロファイルを証明しました。現在は、IND対応試験および第I相臨床試験の候補特定を進めており、インシリコ・メディシンは、2022年初頭までの臨床試験を目標とし、第II相臨床試験後に医薬品を共同開発する製薬会社との研究を模索しています。
インシリコ・メディシンのAIにより発見、検証されたIPFの前臨床候補は、バイオテクノロジーおよび創薬の分野において複数の業界初を達成しています。
- 複数のヒト細胞および動物モデル実験による検証の成功を通じ、AIが作り出す新たな創薬ターゲットおよび分子の有効性を証明することによって、今日の画期的な進歩は、AIが前臨床研究に至るまでの研究開発において科学的に有益であることを業界で初めて証明しています。
- 創薬において初めて化学および生物学を結びつけました。これまでの新薬の設計および前臨床、臨床研究を通じた有効性の証明に関連するステップは、創薬プロセスの部分とは異なるものでした。
- インシリコ・メディシンは、前臨床新薬候補の特定をこれまでより早く、そして低コストで実現しました。これは、前臨床開発を劇的に早め、医薬品開発コストを数百万ドル削減することができます。
多くの場合、創薬に関する話題は新規ターゲットが発見された、または新薬が臨床試験に入った際に集中しますが、イノベーションやビジネスへの影響が最も注視される部分は、ターゲットの発見および臨床開発の間にあります。
「創薬のために唯一無二のAIを活用した統合システムを開発する先駆者および先導者になることで、我々は創薬における手引きを書き換えています。」と、ジャーヴォロンコフ博士は述べています。「インシリコ・メディシンのAIプラットフォームは、ターゲットの特定、小分子の設計および臨床試験結果の予測等、医薬品開発のすべての領域を結びつける初の共通したシステムを構築することで、医薬品研究開発の各段階を支えることができるようになります。」
ジャーヴォロンコフ博士は次のようにも述べています。「適切な創薬ターゲットを適切な疾患に結び付けることは、医薬品の研究開発における最大の課題です。初めてAIによって発見され、科学的にPCCが証明されたという今日の革命によって、インシリコ・メディシンは、創薬におけるもう一つの大きなハードルを乗り越え、非常に高価で時間のかかるこれまでの創薬プロセスにおける妨げとなっていたものを取り除きました。」
これまでの創薬は、数千の小分子のテストから始まり、さらに10個の分子うち約1個のみが実際の患者を対象にした臨床試験に進むという、前臨床試験に適した数個の分子特定までに数百の分子の試験および合成が続いていました。これは驚くほど時間も費用もかかるため、全プロセスにおいて開発に10年以上の年月を費やし、数十億ドルの資金を投入します。各プロセスには数百万ドルの費用がかかります。新薬を市場に投入する際のハードルをさらに高くする理由として、研究開発における膨大な数のステップが挙げられます。各ステップでは数百万ドルの費用を必要とし、多くの場合、製薬のエコシステム内のさまざまな企業およびビジネス単位で切り離されたり実行されたりします。
2019年、インシリコ・メディシンは、創薬における新たなAIシステムを開発および導入し、歴史を作り上げました。このAIシステムは、たったの21日間でまったく新しい分子をおよそ15万ドルという費用で生み出すことを可能にました。ターゲット発見の95%が失敗していた中で、当時のインシリコ・メディシンは、創薬における業界最大の問題を解決しました。インシリコ・メディシンのAIソフトウェアは、最新のAI技術を利用した生成化学を用いて、特定のプロパティを持つ新たな分子構造を迅速に生成することができます。敵対的生成ネットワーク(GAN)および生成強化学習(RL)AI技術を利用して創薬分野に足を踏み入れた最初の企業として、インシリコ・メディシンのAIソフトウェアスイートは、新たな分子の発見および生成の成功を目的としたAIの利用を業界で初めて科学的に実証しました。
業界からのコメントおよび付属情報
「創薬における最も困難なステップでありミステリーのひとつは、ターゲットの実証に関連しています。具体的には、臨床現場において強い影響を持つターゲットの特定という点です。インシリコ・メディシンはAIの取り組みを通じ、創薬における最も困難な点に焦点を当てることができています。」—Tudor Oprea博士 (ニューメキシコ大学教授兼トランスレーショナル情報科学部長、創薬における25年の産業的および学術的経験を持つ医薬品開発有識者)
「医薬品開発においてはスピードがすべてです。人間への投与に係る医薬品認証に関連する少なくとも90%の費用は後期臨床試験に費やされています。インシリコ・メディシンはAIを活用した創薬のための統合システムにより、臨床試験に至るまでの創薬プロセスの多くの段階で、手遅れになる前、早い段階で研究者に失敗することを見つけ出す手助けをしてくれます。」— Charles Cantor博士
(ボストン大学名誉教授、インシリコ・メディシン科学諮問委員、Sequenom社およびレRetrotope社共同創設者)
「インシリコ・メディシンによるこの成果は、AIが創薬において強力なツールであることを示す証拠の一つです。AIをできるだけ多くのプロセスに利用することで、AIが効果的な治療法を開発するための時間とコストを大幅に削減できます。」— Alán Aspuru-Guzik博士(トロント大学化学コンピューター科学教授、AI企業であるKebotixおよびZapata Computing共同創設者)
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インシリコ・メディシンについて
インシリコ・メディシンは、特定のプロパティおよび新しい分子構造を生み出すための生成モデル、強化学習(RL)、その他最新の機械学習技術を最大限に活用するソフトウェアを開発しています。また、合成生物学的データの生成、ターゲット識別、臨床試験結果の予測のためのソフトウェア開発にも取り組んでいます。当社は、2つのビジネスモデルを統合し、AIを活用した創薬サービスおよびPharma.AIのプラットフォーム(http://www.insilico.com/platform/)を通じたソフトウェアの提供に加え、前臨床プログラムにおける独自のルートを開発しています。当社前臨床プログラムは、上述のプラットフォームを通じて発見された新たな創薬ターゲットおよび新分子を追い求めた結果です。2014年以降、インシリコ・メディシンは、5,200万ドル以上の資金を調達し、複数の業界賞を受賞しています。また、100以上の査読付き論文を発表、25以上の特許を申請しています。ウェブサイトはこちら:http://insilico.com/