News Release

特集号:オルガノイド、設計上の課題への対処が進み、生物医学の最先端領域を開く

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

4本のReviewを特集したScienceのSpecial Issueでは、オルガノイド技術によって生物医学における最先端の研究領域が開かれつつある状況が明確に説明されており、例として患者一人一人の細胞に対する抗がん剤の試験が可能になることが挙げられている。この技術が普及する中、研究者らはオルガノイドの製造、制御、分析、その微少環境に関係するものなど、アンメットニーズを満たそうと取り組んでいる。

1本目のReviewではHans CleversとDavid Tuvesonがオルガノイドをがん研究に使用した10年間にわたる取り組みについて述べている。「この研究によって研究者らは初めて非常に多くの患者から小さな腫瘍標本を採って研究室で培養し、それらで生きたバイオバンクを作れるようになった」とCleversは関係するビデオで述べている。そのバイオバンクは研究で動物の代わりに使用できる。この方法で形成された癌のオルガノイドを使用すれば、がん患者一人一人に対して個々の抗がん剤をサンプル試験したり、がん変異体をオルガノイドに導入し、個々のがん変異体のがんに対する関与を解明したりすることもできる。ビデオではCleversが、近年免疫細胞が抗がん剤開発に特に重要だと考えられるようになった経緯を説明している。「オルガノイドによって今初めて、患者からがん細胞と免疫細胞を採り、それらを共に腫瘍オルガノイドに導入し、免疫細胞にがん細胞を消したり、殺したりさせる仕組みを研究する機会が得られた」とCleversは述べている。

Special Issue 2つ目のReviewではSunghee Estelle Park、Andrei Georgescu、Dongeun Huhらが、オルガノイドと生体機能チップ技術をどのように統合すればオルガノイドを生物医学的に応用できる可能性が広がるかを述べている。例えば、人体では不可能な試験を行うといった応用である。オルガノイドは生体機能チップ技術より正確な人体のモデル化が可能だが、極めて可変的に形成されるため、制御が難しい。「微少環境で細胞を非常に正確に制御するには生体機能チップ装置が使える」とHuhは関係するビデオで述べている。Huhによると、「大きな関心が持たれるのは、生理学的にリアルなオルガノイドと制御性と再現性を持つ生体機能チップ技術を組み合わせて、両者の持つ最高のものを提供してくれるより高度なシステムを開発することだ」という。彼はビデオで自分の機関の生体機能チップ技術の一部について説明している。それらは、宇宙飛行中に宇宙飛行士が感染しやすくなる理由と過程を調査するために国際宇宙ステーションで近日使用開始されることになっている。

Special Issue 3つ目のReviewでは武部貴則とJames M. Wellsがオルガノイドの設計における現在の課題を取り上げている。制御の下でオルガノイドに複雑な細胞を導入するという課題である。次世代のオルガノイドにはパターニング、組立て、形態形成、成長および機能を制御するために工学ベースの対話型設計が求められるであろうと、武部とWellsは述べている。4つ目のReviewではMarti Shahbazi、Eric D. Siggia、Magdalena Zernicka-Goetzが幹細胞由来のオルガノイドのような胚構造を作ることで胚発生研究の課題がどのように克服できるかを述べている。

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