News Release

腸内マイクロバイオームが免疫療法の成功を左右する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

なぜ免疫療法がよく効く患者と効かない患者がいるのか?その理由は明らかになっていないが、2つの研究により、腸内マイクロバイオームがなんらかの役割を果たしているというエビデンスが示された。1つ目の研究では、Marie Vetizouらが、特異的病原菌を保菌していない(SPF)マウスまたは無菌マウスにおいて、確立された肉腫に対する免疫療法薬の抗CTLA-4抗体(9D9、イピリムマブ)の効果を検討し、イピリムマブはSPFマウスには有効だが無菌マウスには有効ではないことを見出した。また、Vetizouらは抗菌薬がイピリムマブの抗腫瘍効果を弱めることも見出した。糞便のリボソームRNAの解析により、イピリムマブの単回注射がマイクロバイオームに有意な影響を与え、バクテロイデス目(Bacteroidales)菌とバークホルデリア目(Burkholderiales)菌の減少を引き起こすことが示された。無菌マウスおよび抗菌薬投与マウスにおいて消失した微生物を補充したところ、イピリムマブ治療の抗癌効果が回復した。臨床の場においてこの結果を検討するために、研究者らは転移メラノーマを有する患者25例の便検体を採取し、バクテロイデス目(Bacteroidales)菌の有無に基づいて検体を分類した。そして、それらの便検体を無菌マウスに移植し、2週間後イピリムマブを投与した。その結果、バクテロイデス・フラジリス(B. fragilis)の増殖と腫瘍サイズの減少とのあいだに相関がみられた。

Ayelet Sivanらは、腸内マイクロバイオームの構成と抗癌治療に対する反応とのあいだに同様の関連を見出した。メラノーマに対する抗PD-1/PD-L1モノクローナル抗体治療に、微生物叢が及ぼす影響を明らかにするために、Sivanらは、マウスの2つの群を調べた。Jackson Laboratory(JAX)マウスとTaconic Farms(TAC)マウスは、異なる腸内の細菌を保菌していることが知られている。Sivanらは、TACマウスにおける異なる腫瘍特異的T細胞反応がより悪性の腫瘍増殖と腫瘍内のCD8+ T細胞の蓄積につながることに着目した。JAXマウスからTACマウスへの糞便移植により、TACマウスの腫瘍増殖は緩やかになり、それらの移植とPD-L1抗体との組み合わせにより、腫瘍コントロールと循環腫瘍抗原特異的T細胞反応が改善した。JAXのマイクロバイオームを詳細に調べたところ、ビフィドバクテリウム属菌の数が400倍多いことが明らかになったが、これは抗腫瘍T細胞反応との正の相関を示した。この細菌を保菌しているマウスのゲノムワイド転写プロファイリングから、抗腫瘍反応に不可欠ないくつかの遺伝子の発現増加が示された。まとめると、これらの2つの研究は、腸内マイクロバイオームが、癌の免疫療法を促進する重要な役割を果たしている可能性を示している。

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Article #26: "Anticancer immunotherapy by CTLA4 blockade relies on the gut microbiota," by M. V�tizou; J.M. Pitt; R. Daill�re; N. Waldschmitt; C. Flament; S. Rusakiewicz; B. Routy; M.P. Roberti; C. Doung; V. Poirier-Colame; A. Roux; S. Becharef; T. Yamazaki; N. Jacquelot; D.P. Enot; P. Opolon; A. Eggermont; P.-L. Woerther; E. Chachaty; N.Chaput; C. Robert; C. Matteus; G. Kroemer; L. Zitvogel at Institut de Canc�rologie Gustave Roussy Cancer Campus (GRCC) in Villejuif, France; M. V�tizou; J.M. Pitt; R. Daill�re; C. Flament; S. Rusakiewicz; B. Routy; M.P. Roberti; C. Doung; V. Poirier-Colame; A. Roux; S. Becharef; T. Yamazaki; N. Jacquelot; A. Eggermont; C. Robert; G. Kroemer; I.G. Boneca; L. Zitvogel; N. Chaput at INSERM in Villejuif, France. For a complete list of authors, see the manuscript.


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