無料のオンライン教育コースの登場は全ての人にとって利益になるように見えるかもしれないが、社会経済的背景が低い学生は社会経済的背景の高い学生と比べて、そうしたプログラムに登録する割合も、卒業証を取得する割合も低いことが、新たな研究により明らかにされた。この結果は、無料でアクセスの簡単な大規模オープン・オンライン・コース(Massive Open Online Courses:MOOCs)は、異なる様々な背景を持つ学生の間のギャップを縮めるだろうという理論とは、相反するものである。MOOCsの登録における社会経済的格差を分析するため、John HansenとJustin Reichは、ハーバードとMITで提供されている68コースの登録と終了のパターンを調べるため、13~69歳の米国の参加者164,198人についてのデータを詳細に検討した。社会経済的状況(socioeconomic status:SES)を明らかにするため、親の最終学歴、近隣集団の平均収入、近隣集団の平均最終学歴という3つの指標が用いられた。データの示唆するところによると、近隣集団の平均収入が20,000ドル増加すると、プログラム参加のオッズが27%上昇した。近隣集団の平均最終学歴が1年増加するごとに、参加のオッズは69%上昇した。青少年では、近隣集団のSESとMOOCs参加との関係が最も強かった。最も学歴の高い親が学士を取得している青少年の場合、最も学歴の高い親が学士より下の学歴の、同様のコースに参加していてそれ以外は同様の青少年と比較して、卒業証を取得するオッズはほぼ1.75倍であった。ハーバードとMITのMOOCsではあらゆる背景の学生が卒業証を取得しているが、特に青年の場合は、SESの高い学生のほうが修了証を取得する割合が高かった。
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