News Release

AI技術により音から睡眠個性を視覚化、快適な眠りのパーソナル化に期待

Osaka University researchers use smartphones and machine learning to measure sleep patterns

Peer-Reviewed Publication

Osaka University

Figure: Comparison

image: Comparison between sleep pattern visualization by AI method (above) and sleep stage by PSG (below), showing correlation between sleep-related sounds and sleep stages. view more 

Credit: Osaka University

概要

大阪大学センターオブイノベーション(COI)拠点は、JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)の研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」による支援のもと、脳マネジメントにより潜在力を発揮するスーパー日本人の実現を目指し、医脳理工・産学連携のプロジェクトを進めています。

このたび、大阪大学産業科学研究所の福井健一准教授と同大学歯学研究科・加藤隆史教授らの研究グループは共同で、スマートフォンやタブレット端末で録音された音から、個人の睡眠パターンを機械学習[1] により可視化・評価するAI技術を開発しました 。

これまで睡眠環境音[2] は豊富な情報を含んでいるものの、室内外の全ての音であるため、ノイズ処理や睡眠関連音(歯ぎしり、体動、いびき等)の識別が困難でした。

今回、福井准教授らの研究グループは、複数の機械学習の手法を組み合わせ、高精度に睡眠関連音を抽出し、睡眠関連音の特徴に応じてそれらを2次元平面に自動マッピングするユニークな手法を開発しました(図) 。

睡眠実験の結果、提案法による睡眠パターンの可視化(図 上段)は睡眠ポリソムノグラフィ(PSG)検査[3] により推定された睡眠段階(図 下段)と高い関連を確認しました。例えば、図 の被験者はいびき音と深睡眠(N3)の関連が強いことが分かります。別の被験者は浅い睡眠(N1もしくはN2)時に多くの歯ぎしり音を確認しています。同様の関連性を10名の被験者で確認しました。

各睡眠関連音の推移を可視化したデータは、快適な睡眠のパーソナル化に応用が可能です。本成果が、家庭で手軽に睡眠を自己管理できるスマートフォンやタブレットアプリケーションソフトの開発につながれば、睡眠障害の早期発見や健康増進に役立ちます。さらに、歯ぎしり、体動、いびき等に表れた個人の睡眠パターンに応じた照明やエアコンの制御など、質の高い睡眠へ導く技術にも期待が高まります。

研究の背景

大阪大学COI拠点では、産学連携アンダーワンルーフのもと、医学・脳科学・理学・工学が連携(医脳理工連携)して、脳機能の解明を行い人間の状態(感情やストレスの状態)との因果関係を解明する研究を行っています。これらの情報を基に、人間の各状態に応じた活性化の手法を開発し、社会に提供する脳マネジメントシステムの研究開発を進めています。

今後、社会に提供される脳マネジメントシステムは状態を検知し、活性化手段を提供し、活性化状態を評価し、さらなる活性化につなげるというサイクルを繰り返しますが、活性化手段の1つとして高品質な睡眠を確保することは重要です。日本人の5人に1人が不眠に悩んでいるという報告があります。従来、睡眠の質は専門的な施設や病院でなければ計測できませんでした。そこで家庭で簡単に計測でき、かつ体調や周囲の環境によって異なる睡眠パターンを把握することが可能なシステムの開発が重要になります。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果を応用することで快適な睡眠のパーソナル化が可能になり、家庭で手軽に睡眠を自己管理するスマートフォンやタブレットアプリケーションソフトの開発によって、健康増進や睡眠障害の早期発見が期待できます。また個人の睡眠パターンに応じて照明やエアコン等の環境を制御することで質の高い睡眠へ導く技術開発にも期待が高まります。

特記事項

本研究成果は、米国人工知能学会が発行する会議録「AAAI2017 Workshop Proceedings」(オンライン)に掲載されました。

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タイトル:“Personal Sleep Pattern Visualization via Clustering on Sound Data”
著者名:Hongle Wu, Takafumi Kato, Tomomi Yamada, Masayuki Numao and Ken-ichi Fukui
本技術は、特許出願中です。
出願番号:特願2016-089830
出願日:平成28年4月27日
発明者:福井、呉、加藤、山田、沼尾
発明の名称:睡眠状態解析支援装置、および、睡眠状態解析支援プログラム

大阪大学COI拠点は、JSTセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムによる支援により、金沢大学、パナソニック(株)など17機関、27企業と共同で研究を進めています。

用語解説

※1 機械学習

明示的なプログラミングなしにデータから対象のモデルをコンピューター上に自動構築する数理的技術。今回はその中でも教師なし学習(教師とは人が明示的に与える正解情報)である自己組織化マップ(Self-Organizing Map; SOM)を改良した技術によって、多次元の音特徴情報を2次元平面に写像(マッピング)しています。

※2 睡眠環境音

睡眠環境中の全ての音(歯ぎしり等の睡眠関連音や、エアコンの音、車の音、話し声など)

※3 睡眠ポリソムノグラフィ検査

典型的には、睡眠時における脳波、呼吸、脚の運動、あごの運動、眼球運動(レム睡眠とノンレム睡眠)、心電図、酸素飽和度、胸壁の運動、腹壁の運動などを記録するものです。


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