News Release

シリコーン組成モノリス型多孔体「マシュマロゲル」を用いてジャイアントベシクルを簡単・大量に生成

~その場生成による人工細胞研究や医療・化粧品開発に期待~

Peer-Reviewed Publication

Tohoku University

Simple, Mass Production of Giant Vesicles Using a Porous Silicone Material

image: Marshmallow gel: macroscopic and microscopic image (Scanning Electron Microscopy). view more 

Credit: Gen Hayase

東北大学学際科学フロンティア研究所 早瀬元・助教と大学院工学研究科ロボティクス専攻 野村慎一郎・准教授はシリコーン組成モノリス型多孔体「マシュマロゲル」に脂質を吸着させた後に緩衝液を染みこませてスポンジのように絞り出すことで、ジャイアントベシクル(リポソーム)分散液を一度に大量生成する技術を開発しました。この簡易手法はジャイアントベシクルを必要とする細胞研究のツールとしての他、医療や化粧品などへの応用が期待されます。本発表はLangmuir掲載号のカバーアートに選ばれました。

1. 背景

リン脂質二重膜から成るジャイアントベシクル(リポソーム、以下 GV)は細胞に類似した構造と数マイクロメートルの大きさをもちます。そのため人工細胞や分子ロボット研究の器にする他、生きた細胞に機能性の分子を導入するなど、さまざまな生化学実験に用いられてきています。GV 分散液の作製にはこれまで数多くの手法が提案されてきましたが、一度に大量の数百ミリリットルを作製する方法は限られていました。2011 年に野村は、多孔質のポリジメチルシロキサン(PDMS)に脂質を吸着させて緩衝液中で絞り出すことで GV が生成することを発見しました。 その方法を実用的に発展させ、細孔制御されたシリコーン組成柔軟マクロ多孔体「マシュマロゲル(MG)」を用いることで効率化を図ったのが、今回の研究内容です。

2. 今回の研究成果

MG の微細構造は数マイクロメートル径の骨格と数十マイクロメートルの細孔径から成っており、微細な骨格表面は滑らかな疎水面となっています。 リン脂質を含むクロロホルムを MG に吸収させて真空乾燥を行うと、リン脂質は疎水基を MG 骨格・親水基を細孔側に向けて配向すると考えられます。ここに緩衝液を染みこませれば細孔内で GV が生成します。この GV を緩衝液で絞り出すことで GV 分散液を取り出すことができるという仕組みです。あらかじめ緩衝液に分子を加えることで、GV 内に分子を高効率で内包できることもわかりました。

マシュマロゲルを用いた GV 簡易生成をより具体的に示すためデモンストレーショ ンを行いました。市販のコーヒーポットに脂質を染みこませたマシュマロゲルを詰め

込みプレスしたところ、GV 分散液が生成することがわかりました。このような簡単な手順でも GV 生成が可能であることから、今後は生成手法のひとつとして活躍することが期待されます。

3. 今後の展開

MGは作製プロセスが比較的簡単で、同じサンプルでベシクルを何度も生成することが可能です。本方法は人工細胞研究ツールとしての活躍のみならず、その場生成可能な医療・化粧品への応用が考えられます。現在はより簡単な MG 作製方法を開発中で、近日発表予定です。

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