生息地で移動しているときに、アリは移動した距離を測るために歩数を数えているのみならず、物の動きも視覚的に追跡していることが新しい研究によって報告された。オプティックフローと呼ばれるこの動きの追跡は多数の昆虫で発見されていたが、以前はアリは最小限使用しているにすぎないと考えられていた。今回、Sarah Elisabeth PfefferとMatthias Wittlingerの研究結果により、アリは道に迷ったときに単独でオプティックフローを頼りに巣までの帰り道を見つけられることが示された。PfefferとWittlingerは今回、巣が衛星状に多数点在するサテライトコロニーで生息しているサバクアリCataglyphis bicolorについて調査を行った。経験豊かな採餌アリは外の環境にかなり不慣れな巣内の働きアリを運んで巣間を行き来している。これらのアリは体内に持つ歩行距離計測の仕組みを基本的に頼りに、歩いた歩数から移動した距離を計算できることがこれまでの研究で明らかになっていた。これらのアリが視覚的な情報をナビゲーションに使用する仕組みを解明するため、PfefferとWittlingerは隣り合う巣の2つの入り口を歩行経路でつないだ。採餌アリがいったん巣内のアリを一方向に10メートル運ぶと、そのアリのペアを引き離し、運ばれて来たアリを同じだけ離れた地点に逆向きに置く。運ばれて来たアリはまず置かれた場所で自分を運んで来た採餌アリを探し回るが、その後、いなくなったアリの居場所を突き止めるためか、実際に巣に向けて歩き出し、行きつ戻りつしながら10メートル近い距離にある予測する巣のあたりを探し歩く。しかし、「目隠しされて」運ばれて来た対照群のアリは、採餌アリと離されて放置されると巣の位置を突き止めることができなかった。これはアリたちが視覚的な手掛かりを頼りに距離を測っていることを示している。さらに詳しい実験では、オプティックフローと歩行距離測定が個々に機能することでアリは独自のナビゲーションシステムを2つ持っていることが判明した。
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