研究チームが生物工学により血管を作製し、4年間の第2相臨床試験中に末期腎不全患者60例の天然の循環系に安全かつ有効に組み込むことができた。この新しい血管(現在、進行中の2件の第3相試験で検討されている)は、医学の重大なギャップである、損傷したヒト血管の代わりに使える安全かつ有効な素材の緊急のニーズへの対処に有用と考えられる。血管は、慢性心疾患、臓器移植、および癌手術などのさまざまな疾患や手技により損傷を受けることがある。損傷した血管を修復する標準治療には、体の他の部分から採取した血管との置き換えなどがあるが、この方法はすでに内科疾患で苦しんでいる患者に過度のストレスを与えることがある。ヒトドナーや動物からの血管採取などの他の方法は、限られた入手可能性や組織の完全性を損なう保全技術により、危機に直面している。Robert Kirktonらは、これらの障害を克服するため、人工ヒト組織をこれまでで最も詳細に顕微鏡解析し、組織工学技術を用いて生物工学によるヒト無細胞血管(HAV)をデザインした。具体的には、ヒト血管細胞を生分解性の足場に播種し、バイオリアクター系に格納して組織を増殖させ、8週間のインキュベーション後、強力な機械的・構造的完全性を有する無細胞血管を残してHAVから細胞性物質を除去した。HAVをアクセスポイントとして血液透析(健康な血管にアクセスする必要がある侵襲的な手法)を受けている末期腎不全患者60例に移植した。移植後16~200週間の被験者13例から採取したHAV組織検体16個の解析から、この血管が徐々に患者自身の細胞および微小血管系に定植したことが明らかになった。これらの結果は、HAVが、細胞を含まない構造から血液輸送を行える機能的な多層から成る組織に変化し、効率的に患者自身の血管となったことを示している。
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Journal
Science Translational Medicine