News Release

ヒトのゲノミクスおよび生理学の究極の最前線:NASA Twins Studyの結果

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

NASAによる長期間にわたるヒトの宇宙飛行が健康に及ぼす影響について、人工衛星で1年近くを過ごして地球に帰還した宇宙飛行士Scott Kellyとその双子であるMarkを比較した新たな研究により、詳細に検討された。著者らによれば、その結果から、Scottには有意な健康上の差は認められなかったことが示されたという。しかしこの結果は、宇宙空間に6ヵ月以上滞在した宇宙飛行士における健康上の影響に関する知識のギャップを埋める端緒であり、地球に帰還したScott Kellyに持続的に認められる何らかの変化が宇宙飛行のみに関係しているのか、あるいはそれらの変化がどれだけの期間続くのかは不明である。しかし、宇宙飛行に関連するリスクとして放射線や微小重力への曝露が挙げられ、宇宙空間への長期滞在の間にこれらのリスクがどのような影響を及ぼすのかは不明であった。Francine Garrett-Bakelmanらはこの問題を研究するために、Scott Kellyが国際宇宙ステーション(ISS)に1年間滞在した間に、元宇宙飛行士であった兄弟のMark Kellyが対照者として地上に留まった今回の機会を利用した。Garrett-Bakelmanらは、統合的なマルチオミックスを利用して、分子的、生理学的および行動的アプローチによってKelly兄弟の両者を、1年にわたるScottのISS滞在中および滞在後について評価した。ISS滞在中のScottから得た生物学的サンプルが、凍結して後に送付されるか、補給ロケットソユーズによって処理のために即時に地上に送付された。分析の結果、Scottに双子の兄弟と比べていくつかの変化が認められ、それらの変化の一部は人工衛星から帰還後にも持続していた。これらの変化には、DNAメチル化における小さな差(5%未満)もあった。また、Scottの一部の遺伝子の発現、特に免疫系に関係する遺伝子の発現には変化がみられたが、これらの遺伝子の90%以上が、宇宙飛行の6ヵ月後に正常な発現レベルに戻った。Scottの眼球の形状に認められた変化、例えば網膜神経の肥厚、ならびに一連の検査においてScottの一部の認知能力の低下が報告された。これらの変化は、宇宙飛行のみに起因するものではないと考えられる、と著者らは強調している。著者らはまた、この研究で分析したサンプル数が少なかったこと、また今後の研究に対するベースラインとしての有用性に限界があることも強調している。しかしながら、Markus Löbrichは関連するPerspectiveにおいて、長期間の宇宙飛行がヒトに及ぼし得るリスクに関する基礎的な知識基盤の構築に向けて「疑いもなく、Garrett-Bakelmanらによる今回の研究は、この取り組みにおける人類の小さな一歩以上のものである」と記している。

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