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細胞は迷路をどのように解きながら体内を長距離移動するのか

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新しい研究によると、細胞は迷路を解くのが特に上手だという。この研究により、細胞は自己生成した化学誘引物質の濃度勾配を利用して、体内の長く複雑なルートを進む能力があることが実証された。こうした細胞の能力を実証するのに用いられた2本の映像には、ロンドン近くのハンプトン・コート宮殿内にある迷路園を再現し、その迷路を細胞が進む様子が映っている。細胞は、走化性という現象において誘引性のある化学物質の濃度勾配を利用して、組織の間を進む。しかし、単に走化性だけでは短距離の誘導しかもたらさない。ところが、一部の細胞は胚形成や神経発生、がん転移、炎症性免疫反応において、人体の中を比較的長い距離移動する。こうした細胞が複雑な生物環境内の通り道をいかに正確に把握しているかについては、基礎となるメカニズムはよくわかっていない。Luke Tweedyらは計算モデル化と生細胞実験を併用して、人体中に張り巡らされた複雑に分岐した経路を細胞がどうやって進んでいるかについて説明した。Tweedyらはマイクロ流体の小型迷路を作成し、生きたDictyostelium discoideum(キイロタマホコリカビ、土壌アメーバの一種)が迷路を解いて進む様子を観察した。著者らは、細胞が最も上手に進むことができるのは、「自己生成した走化性」を用いて自ら誘引物質の濃度勾配を作り出し、周囲の情報を大量に得られる場合であることを見出した。安定した化学誘引物質の濃度勾配を壊すことによって、細胞は新しい誘引物質が周囲に拡散する様子を察知する。その結果、細胞は曲がり角を「見て」、分岐点で正しい道を正確に予測することができる。Tweedyらは、こうして自己生成した濃度勾配が、長距離に及ぶ多くの細胞過程(炎症や生殖細胞の移動など)に不可欠であると結論付けている。

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