数千個の細胞の癌進行をリアルタイムで追跡する新しい方法により、癌転移の速度、経路、ドライバーに関する新しい見識が明らかになった。「われわれの研究は、数ヵ月間の増殖中にin vivoで数万個の細胞を個別に区別し、深く解明された正確な細胞系統発生を再構築し、それらを解釈して細胞の祖先におけるまれな一時的なイベントを特定することで、これまで明らかになっていなかった細胞表現型の差異を解明できることを示している」とJeffery Quinnらは述べている。転移は癌進行における特に重要な段階であり、癌関連死の主な原因である。しかし、まれで一時的でランダムに生じるため、転移イベントのリアルタイムでのモニタリングは依然として困難である。Quinnらは、新しいCas9をベースとした単一細胞系統追跡技術を、単一細胞RNAシークエンシングと組み合わせて、肺癌の異種移植片マウスモデルにおける転移の進行を検討した。この方法により、Quinnらは、系統発生を行わせて、数ヵ月間の増殖と播種の間、数万個の転移ヒト癌細胞の挙動を追跡できた。Quinnらは、転移が迅速かつ動的に広がり、同じ細胞系統由来の癌細胞が、転移できない癌細胞集団から高頻度で転移する非常に悪性度の高い集団に至るさまざまな転移表現型を示すことを明らかにした。さらにQuinnらは、転移表現型に関連した異なる遺伝子発現プロファイルを特定し、それにより、癌進行における役割がこれまで不明であった候補遺伝子を明らかにした。Quinnらによれば、新しい系統追跡技術では、遺伝子変異、微小環境適応、および治療薬への耐性獲得などの観察が困難な多くの他の細胞生物学側面に関する情報が得られる。
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