強誘電秩序および反強誘電秩序を示す材料は、超音波発生装置や不揮発性メモリといった圧電・蓄電材料などで数多く実用化されているが、分子レベルの構造が、強誘電および反強誘電秩序の発現にどのような影響を与え、電場や応力に対する応答性にどのようにかかわるのかについては、物理的な理解はなされていないのが現状であった。東京大学 生産技術研究所の田中 肇 教授、高江 恭平 助教の研究グループは、強誘電および反強誘電秩序を分子形状により制御可能なモデルを提案し、シミュレーションにより、相転移および応答の物理的な解明を目指した。分子間の立体的な相互作用と電気的な相互作用とが競合しているという性質に着目し、電気双極子を持つ分子の形状を変えていくことで、強誘電秩序相と反強誘電秩序相の相転移を制御することに成功した。この相転移は結晶構造の変化を伴い、その結果、相転移に際し大きな変形・熱の発生/吸収が起こる。つまり、電気分極・変形・熱が結びついた交差応答の実現にも成功した。分極秩序およびその応答を制御するための分子設計に、磁性材料に対しても適用可能な形で、理論的なガイドを与えられる点で、実用上のインパクトも大きいと期待される。
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本成果は2018年9月17日(米国東部時間)の週にProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America誌(PNAS、米国科学アカデミー紀要)で公開される。
Journal
Proceedings of the National Academy of Sciences