News Release

大腸がん細胞はグルタミン代謝を利用して生存する!

大腸がんの診断・治療法に「代謝」の視点が加わることに期待

Peer-Reviewed Publication

Osaka University

image: Colon cancer cells produce proteins, fatty acids, nucleic acids and reactive oxygen species (ROS). Proteins, fatty acids, and nucleic acids are essential factors for cell survival using glutamine metabolism. On the other hand, ROS is a factor for cellular disorder. Colon cancer cells up-regulate the expression AGC gene. Then AGC reduce ROS. view more 

Credit: Osaka University

大阪大学大学院医学系研究科の今野雅允寄附講座助教(先進癌薬物療法開発学寄附講座)、石井秀始特任教授(常勤)(癌創薬プロファイリング学共同研究講座)、森正樹教授(消化器外科)らのグループは、大腸がん細胞はグルタミンを取り込んで、細胞の生存に必須な脂肪酸、タンパク質、核酸を産生し、増殖していることを明らかにしました(図1)。 今後、大腸がんに対して、グルタミン代謝など新たな視点を加えることにより、画期的な診断や治療法につながることが期待されます。

研究の背景

最近のがんの研究では、がん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常と関連して、がん細胞の代謝が、がんの形成や進行に影響を及ぼすことが明らかになってきました。

膵臓がん細胞では、がんの悪性化に関わるKRASという遺伝子の変異によってグルタミンの代謝経路が変化し、膵臓がんの悪性化に関わることが知られていますが、大腸がんでのKRAS遺伝子の変異による影響は明らかではありませんでした。

今回、本研究グループは、世界で毎年70万人が亡くなると言われており、3番目に多いがんである「大腸がん」のグルタミン代謝の役割を調べました。

本研究の成果

本研究グループは、大腸がんの細胞が生育する培地の栄養条件を変化させて、大腸がん特異的グルタミン代謝経路を明らかにしました。

大腸がんではKRAS遺伝子の変異の有無に関わらず、グルタミンを細胞内へと取り込み、細胞の生存に必須な脂肪酸、タンパク質、核酸を産生し、増殖していることがわかりました。これらの細胞の生存に必須な物質を産生する際には、細胞にとっては毒性を示す活性酸素を同時に産生してしまうことが知られていますが、大腸がん細胞ではAGCという遺伝子の発現量を上昇させることで、この活性酸素を巧みに除去する仕組みを併せ持っていることも明らかとなりました。さらに、グルタミン酸代謝に関わる酵素であるGLUD1およびSLC25A13の発現調整を介して栄養ストレスに適応し、がん細胞が攻撃性を増すことが分かりました。

今回の研究の成果は、大腸がんに対して新たな治療法を開発する上で、有用な手がかりになると考えられます。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

?がんの診断では、遺伝子変異が高頻度に発生するため、DNAの塩基配列を読み取って遺伝子変異を診断(臨床シークエンス)することも重要ですが、さらに代謝を含めた多彩な側面からアプローチすることが重要であることが示唆されました。

?グルタミン代謝における重要なタンパク質(GLUD1、SLC25A13)を標的とした薬の開発により、大腸がんに対する新しい治療法の開発が期待されます。

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