News Release

健康長寿の秘密を科学的に解明

アンチエイジングの鍵は抗酸化物質を多く含む食物の

Peer-Reviewed Publication

Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University

Prof. Mitsuhiro Yanagida, Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University

image: Prof. Yanagida is the principal investigator of the G0 Cell Unit at OIST. view more 

Credit: OIST

<概要>この度、沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、京都大学との共同研究で、高齢者に特異的に変化する血中代謝物(生体内の代謝によって産生され、個人の健康や病気、食生活などに関する多くの情報を提供してくれる体内物質)を特定しました。このことは、人体の老化の解明ついて重要な手掛かりを見いだしたと言えます。同研究成果は、米国東部時間3月28日(日本時間29日)の週に、米国科学アカデミー紀要(PNAS)の電子版(Early Edition)に掲載されます。

<背景>  

日本人の平均寿命は、男性80.50歳、女性86.83歳と、年々右肩上がり傾向を見せ、男女共に世界有数の長寿国と言えます(『平成26年簡易生命表』厚生労働省)。しかし、高齢化に伴い、生活習慣病や関節疾患などにより介護を必要とする人々も増えており、単に長寿を実現させるだけでなく、いかに健康に長生きをするかということが社会的な課題ともなっています。また、特に大きな疾病はしなくても、高齢化とともに筋力や腎臓などの身体機能が衰退することはよく知られていますが、これまで、この現象について科学的に迫った研究はありませんでした。そこで、OISTの柳田充弘教授を中心とする研究チームは、個々人の健康状態を非常によく反映する人体の血液中に含まれる代謝物を調べることで、老化のメカニズムを科学的に解明することに挑戦しました。

<研究手法と成果>

研究チームは、代謝物の特定と分析をおこなうため、15名の若年成人(25~33歳)と15名の高齢者(74~88歳)を合わせた計30名の健常者から赤血球を含む血液サンプルを採取しました。これまでの研究では、赤血球はほとんど注目されていませんでしたが、血液全体のおよそ半分を占める主要な構成成分であることから、研究チームは、赤血球を重要な検査項目と見なし、詳細な分析をおこないました。

 チームはまず、採取した血液サンプルを液体クロマトグラフィー質量分析法(液体状の試料を分離し、物質を検出する技術)を用いて解析し、血中代謝物の特定をおこないました。次に、特定された代謝物の個人間の変動係数(標準偏差を平均値で割ったもの)を算出し、高齢者の体内で量が増加している化合物と、減少している化合物を調べました。

その結果、高齢化に関わる14種の化合物を特定。そのうちの半数の化合物が、高齢者の体内で減少しており、それらは主に抗酸化物質と、筋力に関わる化合物であることが分かりました。

逆に、体内量の増加が見られた残り半分の化合物類は腎臓および肝臓機能の低下に関与している代謝物であることが判明しました。

さらに、同じ代謝経路で見つかったこれらの加齢に関わる代謝物の一部は、その量の変動が互いに相関していることから、加齢による影響は、両タイプ方の代謝物に同時に作用していることが示唆されました。

<研究の意義・今後の展開>

本研究により加齢に関わる代謝物が特定されたことで、抗酸化物質量の減少と筋力の衰えを防ぐためには、緑黄色野菜や海藻、豆類などの抗酸化物質を多く含む食物や、筋力をつけるための適正量の動物性たんぱく質を摂取し、適度な運動を続けることが重要であることが示唆されました。特定の代謝物質の量が増えれば、体調が改善されることも期待できるでしょう。研究チームは、健康長寿の鍵を握る多くの化合物の解

明に向けて、引き続き必要な情報をできるだけ多く明らかにしていこうとしています。  

長寿に関する研究の意義について、柳田教授は、こう語ります。「長寿は私たちにとって大いなる謎です。高齢者が人生の最期を幸せに過ごすための秘訣はなにか。その謎が解ければ、人類の健康と福祉に貢献することができるはずです」。

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