ナノテクノロジーを癌標的治療に適用する、という現時点で初の試みの 1 つとして、有効であり かつ毒性のない抗癌剤のナノ粒子製剤が作製された。これは、遊離型薬物では達成が困難な性質 である。このナノ粒子製剤は、健康な組織を保護しながら、強力であるが毒性のある癌標的薬を 腫瘍に向けて直接放出する。ヒトの 腫瘍を持つげっ歯類での知見は、ナノ粒子カプセル化型薬物 の臨床試験の基盤となった。オーロラキナーゼ阻害薬は、癌の細胞周期を妨害する分子標的薬で ある。この阻害薬は、有効であるが、患者に対する毒性が非常に高いことが明らかにされており、 後期臨床試験が中止されている。許容不可能な毒性のために開発が中止された癌標的薬は他にも いくつかある。 Susan Ashton らは、薬物の安全性と有効性を改善するため、現在の臨床試験での オーロラキナーゼの送達用に Accurin と呼ばれる重合体ナノ粒子をデザインした。このナノ粒子 製剤は、 効率的なカプセル化のためにイオン対を利用しており、薬物の放出を制御する。大腸腫 瘍を持つラットとびまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫のマウスで、このナノ粒子は腫瘍特異的に蓄 積され、癌細胞に向けてゆっくりと薬物を放出した。げっ歯類では、遊離型の薬剤と比較して、 このナノ粒子にカプセル化した阻害薬が、半分の用量で腫瘍増殖を効率的に遮断し、惹起した副 作用は少なかった。 David Bearss による関連した Focus で、 Accurin ナノ粒子がどのようにしてオ ーロラキナーゼ阻害薬やその他の分子標的薬の安全性と抗腫瘍活性の促進に役立つのかに関する 見識をさらに述べる。
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Journal
Science Translational Medicine