News Release

69ヵ国を対象とした研究によると癌には不可避なDNA複製エラーが重大な役割を担っている

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

Study Featuring Genomic Sequencing & International Data Shows Random Errors in DNA Replication Play Major Role in Cancer

image: This image depicts the mutations attributable to environmental factors (right), DNA replication (center) and heredity (left) in the UK female population. This material relates to a paper that appeared in the March 24, 2017, issue of Science, published by AAAS. The paper, by C. Tomasetti at Johns Hopkins University School of Medicine in Baltimore, Md., and colleagues was titled, "Stem cell divisions, somatic mutations, cancer etiology, and cancer prevention." view more 

Credit: C. Tomasetti <i>et al,. Science</i> (2017)

様々な癌に関係するドライバー(癌化を引き起こすきっかけ)― 遺伝や環境と考えられることが多い―の特定が難航する中、Bert Vogelsteinらは6大陸69ヵ国のヒトのデータを分析し、これらの癌における突然変異の約2/3がランダムなDNA複製エラーに起因することを示した。健康な幹細胞分裂で自然発生するランダムなDNAエラーは環境が大きく異なる国々でも同様に癌ドライバーとして働いているとVogelsteinらは述べている。彼らは2015年にも、米国人のみを対象とした研究ではあるが、類似する結果を発表している。その結果については一部から疑問視されてはいたが、以前に特定された特定の組織での癌の発生率とそれら組織での正常幹細胞の分裂総回数の間の関係は、Vogelsteinらの最新の分析により米国人の特性や環境では説明できないことが確認された。むしろ、様々な組織でのランダムな突然変異は世界のどこにおいても重大で否定しがたい癌ドライバーであった。

Vogelsteinらは423の世界的な癌のデータベースを用いて様々なヒトの組織での幹細胞分裂に関する既報のデータを分析し、それを17種の癌の生涯罹患率と比較した。データにより、全ての国で環境とは無関係に癌の発生率と正常幹細胞分裂に強い相関関係があることが判明した。肺がんの疫学データに一部基づいた次の別の分析により、不可避な突然変異が癌を引き起こしていることにさらなる裏付けが得られたとVogelsteinらは述べている。大切なのは、遺伝や環境やDNA複製に起因する癌化を引き起こす突然変異の割合を突き止めるVogelsteinらの方法は、組織における癌の発生頻度と同様に国における癌の発生頻度を把握するための斬新な方法だということである。今回の研究結果はまた二次予防(早期発見と治療介入)に焦点を合わせた研究努力の重要性も強調している。実際に、癌化を起こす突然変異がすべてランダムな突然変異の結果であるような癌にとっては二次予防が唯一の選択肢であろうとVogelsteinらは述べている。一方、ランダムなDNAエラーに起因する突然変異は一部にすぎず、その他のドライバー変異は環境に関係するという癌にとっては、例えば一次予防(ライフスタイルの選択)にも癌を予防する効果がある。Vogelsteinらは自分らの研究結果は先進国の一部の癌についての疫学的エビデンスと完全に一致し、それらの癌は環境やライフスタイルを改善することで予防できる可能性があると強調している。例えば英国癌研究所の推測によると42%の癌は予防可能、アメリカ疾病管理予防センターの推測では年間の癌による死亡の21%はおそらく防ぐことができる。

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