first-in-human 第1相試験の結果から、弱毒化したマラリア原虫を用いて、10人の健康被験者において強力な免疫応答が安全に誘導され、これら被験者の抗体によりマウスが完全にマラリアから防御されたことが示された。研究者らは、肝臓感染にとって重要な3つの遺伝子を欠失させることでマラリア原虫を弱毒化し、マラリアに対処するための原虫全体を用いた有望なワクチン候補を提供した。地球上の全人口の半数がマラリアのリスクと隣り合わせに生活している。2015年には、2億1400万人の人々がマラリアに感染していると推定され、58万4000人が死亡した。臨床開発過程において最も進んだワクチンは、マラリア原虫の断片を含んでおり、防御効果は限られている。弱毒化された原虫全体を含有したワクチンの接種はそれに代わる方法となるが、マラリアのブレイクスルー感染を引き起こす可能性があるため、安全性に関して大きな課題をもたらす。こうした障碍を克服するため、James Kublinらは遺伝子欠失により弱毒化した原虫(GAP)を作製した。これは、3つの遺伝子をノックアウト(GAP3KO)することで熱帯熱マラリア原虫の肝臓内での発達を止め、マラリアの症状を引き起こす段階であるマラリア原虫の血流中への移行を阻止する。GAP3KOワクチンは、コントロールされた条件下で、感染した蚊の咬傷を介して投与される。参加者にはマラリアの症状は発現せず、血中にも感染の徴候は見られず、強力な防御効果を持つ抗体反応が示された。これらの抗体をヒト化マウスに移入したところ、肝臓におけるマラリア感染が阻止された。これらの有望な結果は、コントロールされたヒトマラリア感染を用いたGAP3KOワクチン候補の第1b相試験への道を開くものである、と著者らは述べている。
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Journal
Science Translational Medicine