アメリカ西部とオーストラリアの各地で年々増え続ける森林火災から出る煙が、長期間にわたって、これらの地域に住む何百万もの人々に体に悪い有害な空気をもたらしている。Leda KobziarとGeorge Thompson IIIがPerspectiveで、煙流に潜んでいると考えられるほぼ知られておらず解明も進んでいない危険な存在、感染性微生物について取り上げている。KobziarとThompsonによると、森林火災の煙には生きた微生物がいるという。人間の健康に悪影響を及ぼすことが知られている細菌や菌類で、土や岩屑、野生の木などの燃焼物からエアロゾル化し、煙流で運ばれる。しかし、煙への暴露が肺や心臓血管にどのような影響を及ぼすかについては広く知られ、理解も進んでいる一方で、森林火災の煙が感染源になる可能性は見落とされ、依然として公衆衛生や森林火災科学における何の取り組みもない。森林火災の煙が増加している地域で特定の真菌感染症が増加していることを示す有力なエビデンスがあるにもかかわらず、微粒子吸入によることが分かっている健康リスクに加え、煙から出た微生物が運ばれることの健康リスクの有無を判断する研究は今までほとんどない。KobziarとThompsonは、森林火災、特に長期にわたる大規模な森林火災に潜む微生物が煙の中で呼吸する人々に悪影響を及ぼす可能性はかなり高いと述べている。したがって、大気科学および公衆衛生科学では研究の焦点を煙が運ぶ微生物の人間への潜在的影響にまで拡大すべきである。これは、煙まみれの空が珍しい事象ではなく標準的な季節性事象になる可能性が高い地域と特に関係深い研究目標である。
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