News Release

コロイドの結晶化に溶媒の運動は寄与するか?

~有力仮説を覆し、長年の未解決問題に手がかり~

Peer-Reviewed Publication

Institute of Industrial Science, The University of Tokyo

東京大学 生産技術研究所の田中 肇 教授、舘野 道雄 元博士課程大学院生(現 東京大学 大学院総合文化研究科 特任助教)、柳島 大輝 元特任研究員(現 英国Oxford大学 ポスドク)、John Russo元特任助教(現 イタリアSapienza 大学 准教授)の研究グループは、直径nm~μm(ナノメートル~マイクロメートル)程度の大きさの微粒子(コロイド)が溶媒中に分散したコロイド分散系の中でも最も単純な系である「剛体球コロイド系」に関して、独自の数値シミュレーション手法(流体粒子動力学法)により、溶媒の運動がコロイドの結晶核形成頻度に与える影響を計算し、溶媒の運動を無視した従来のシミュレーション手法の結果と比較した。その結果、溶媒の運動によりコロイドのブラウン運動が遅くなるものの、ブラウン運動を特徴づける時間スケール(長時間拡散時間)を時間単位に取ることで、結晶核形成頻度は両者の間でほぼ完全に一致することが明らかとなった。本系では、実験・シミュレーション間に十桁を超える結晶核形成頻度の相違が指摘されており、溶媒の運動の寄与がその原因として有力と考えられてきたが、本研究により、この説は明確に棄却された。

物質の結晶化は、自然科学、材料科学分野で極めて重要な基本的な物理現象であり、その定量的理論予測が期待されているが、本研究は、その実現のための有用な指針を与えた。

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本成果は2019年12月20日(米国東部時間)に「Physical Review Letters」のオンライン速報版で公開される。


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