News Release

揮発性有機化合物検出用の高感度ガスセンサーを開発

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

揮発性有機化合物検出用の二酸化チタンナノクリスタルセンサー

image: 

上)揮発性有機化合物検出用の酸化スズナノロッドセンサー模式図(下)エタノールガス100ppmのセンサー感度は、細孔のサイズによって250度で5桁変化する。

Adapted with permission from: T. Kida, K. Suematsu, K. Hara, K. Kanie, and A. Muramatsu, “Ultrasensitive detection of volatile organic compounds by a pore tuning approach using anisotropically shaped sno2 nanocrystals,” ACS Applied Materials & Interfaces, vol. 8, pp. 35485–35495, Nov. 2016. PMID: 27982565. DOI: 10.1021/acsami.6b13006. Copyright 2016 American Chemical Society. view more 

Credit: Professor Tetsuya Kida

揮発性有機化合物(VOC)は、空気中で揮発(蒸発)しやすい炭素系化学物質です。揮発性有機化合物の中には生物や環境に有害なものもあるため、これらのガスを感知するのは健康や環境安全上重要なことです。揮発性有機化合物は自然界にも存在し、また、高感度のセンサーが必要とされる医療診断にも役立ちます。

今回、熊本大学、福岡工業技術センター、東北大学の共同研究により、揮発性有機化合物の検出機能向上を目的に、感応膜上の酸化スズ(SnO 2)ナノクリスタルの粒子サイズおよび細孔サイズを修正することで、ガスセンサー感度を改善することに成功しました。これまで粒子サイズがセンサー感度に大きく関係することがわかっていたため、様々なサイズと細孔分布パターンの酸化スズ粒子を合成する方法を研究し、分析することで、様々なガスに最適なセンサー膜の形態を策定しました。

本研究では熱水法を用いて酸化スズのナノキューブとナノロッドを合成し、様々な細孔と粒径を持つガスセンサー膜を作製しました。既存の手法ではアルカリ性溶液中の陽イオンが用いられていましたが、本研究の実験で作成されたナノクリスタルは、酸性溶液中の有機分子を用いて開発されました。ナノキューブから作製された膜は10nm未満の非常に小さな細孔を有し、ナノロッドで作製された膜は10nmより大きい細孔サイズを有しています。パラジウムが担持されればさらに異なる細孔サイズが加わることによってセンサー感度が向上するのではないかというアイデアをもとに、パラジウムが担持された酸化スズナノクリスタルも合成されました。こうして開発した新しいセンサーは、水素(200ppm)、エタノール(100ppm)およびアセトン(100ppm)を用いてテストを行いました。これらのガスは、それぞれグルコース吸収不全、アルコール中毒、糖尿病性ケトアシドーシスのバイオマーカーとして知られているものです。センサーの感応度(S)は、空気中で生成された電気抵抗(Ra)と試験ガスによって生成された抵抗(Rg)の比(S = Ra / Rg)を用いて計算しました。

研究チームは、300℃でナノキューブが最もよく感応する水素センサーの他は、約250℃で長めのナノロッド(500nm)を使用すると各センサーが最も高く感応することを発見しました。さらに、各ガスに対して最もよく感応したナノクリスタル形態は長めのナノロッドで、パラジウムを負荷したセンサーは250℃で感応度の改善が見られました。本研究を進めた木田徹也熊本大学教授は、次のようにコメントしています。「我々の実験では、より大きな孔径を有するナノクリスタルセンサ−が最も良好な感度を持つことが明らかになりました。特に、細孔サイズが最も大きい長めのナノロッドセンサーのデバイスは、超高感度(感度が5桁増加)であることがわかりました。本実験結果により、センサーの製造方法をセンサーのタイプによって正確に制御することが肝要であることが示されました。」

シミュレーションでは、本研究によるセンサーを使用すればエタノールが10億分の1以下の範囲レベルで検出できると推測されます。つまり、バイオマーカーとして患者の息からアルコールが検出できる可能性があるのです。

新しいセンサーの欠点として、回復に比較的時間がかかってしまう点があります。感応時間が15秒から21秒の間と速い場合でも、回復に157から230分かかりました。これは、感応膜の表面に残った反応副生成物に起因すると考えられます。また、エタノールについての実験およびシミュレーションでは、80nmを超える細孔サイズのセンサーでは飽和してしまう傾向があることが分かりました。しかしながら、この点については細孔サイズの最適化や感応膜の電気抵抗を制御することで克服可能であると考えられます。

本研究成果は「ACS Applied Materials & Interfaces」に掲載されました。

###

[Citation]

T. Kida, K. Suematsu, K. Hara, K. Kanie, and A. Muramatsu, “Ultrasensitive detection of volatile organic compounds by a pore tuning approach using anisotropically shaped sno2 nanocrystals,” ACS Applied Materials & Interfaces, vol. 8, pp. 35485–35495, Nov. 2016. PMID: 27982565. DOI: 10.1021/acsami.6b13006


Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.