News Release

小児遺伝性腎炎の治療薬開発のための高感度・多検体分析システムの開発に成功!

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

4型コラーゲンの複合体 (三量体) 形成とそのモニタリングシステム

image: (A) 4型コラーゲンはalpha-3, alpha-4, alpha-5 が上記にように決まった組み合わせで複合体 (三量体)を形成し、基底膜の構成成分となり、正常に機能します。 (B) Nano luciferase 断片を融合することでalpha-3, alpha-4, alpha-5の三量体を発光の強さで測定することができます。 view more 

Credit: Dr. Kohei Omachi

熊本大学の研究者らは、小児期に発症する遺伝性の腎臓病(アルポート症候群)の原因となるタンパク質(コラーゲン)の異常を高感度で検出する技術を確立し、その異常を是正できる治療薬開発を可能にしました。アルポート症候群の原因は、タンパク質である4型コラーゲンの異常です。しかしながら、4型コラーゲンの働きを機能させる(是正する)ことによる新たな治療法の開発には未だに至っていません。今回の研究では、従来法よりも、労力・時間を短縮し、高感度に4型コラーゲンの是正をモニターできるシステムを世界で初めて構築しました。このシステムで多くの医薬品候補化合物を同時に解析することが可能になります。

 アルポート症候群の治療には、高血圧治療に用いられるレニン・アンジオテンシン系阻害剤が使用され、病態の進行を抑制できることがわかっています。しかしながら、レニン・アンジオテンシン系阻害剤による治療は症状を軽減させるための治療法であり、最終的な末期腎不全への移行を阻止できるものではありません。したがって、根本治療の確立にはこれまでとは全く異なる、「発症の原因に基づく治療」が必要と考えられます。そのような原因を標的とした治療戦略として、医薬品候補化合物による原因タンパク質の機能の正常化があり、他の遺伝性疾患領域では治療に大きく貢献しています。

【研究の内容】  

医薬品候補化合物による原因タンパク質の機能の正常化には、原因タンパク質が本来有する失われた機能を回復させる化合物を効率よくスクリーニングし、目的の化合物を同定する必要があります。したがって、因となるタンパク質の機能が失われた状態と化合物等により機能するようになった状態を効率的に見分けることのできる解析法 (評価分析システム) が必要でした。しかしながら、アルポート症候群には、そのような薬の開発研究に有用な評価システムが存在していませんでした。そこで、本研究では、化合物の網羅的な評価 (化合物スクリーニング) に応用可能な新しい評価システムの構築を目指しました。

4型コラーゲンは、alpha-3、alpha-4、alpha-5の3本のポリペプチド鎖(棒状のタンパク質)が複合体(三量体)を形成します。この複合体が、腎臓で尿の生成に重要な糸球体と言われる器官において、血液成分の濾過の際血液成分の漏出に対する物理的なバリアーとなる基底膜の構成因子となります。アルポート症候群ではそのalpha-3、alpha-4、alpha-5鎖のいずれかの遺伝子に変異が生じることで、そこから産生されるポリペプチド鎖に異常が生じ、基底膜の形成不全が引き起こされることに端を発します。そこで、遺伝子変異が生じても4型コラーゲンalpha-3、alpha-4、alpha-5 鎖のタンパク質の機能を補うことで、alpha-3、alpha-4、alpha-5が三量体形成できるようにする化合物の探索が必要です。

 そこで、alpha-3、alpha-4、alpha-5 鎖の複合体 (三量体) 形成を評価する方法として、タンパク質-タンパク質間の相互作用解析に用いられる split Nano luciferase* (split NanoLucR;NanoBiTR) 技術を用いました 。開発した本システムでは、分割された大小2つのルシフェラーゼ分子の断片をそれぞれalpha-3、alpha-5鎖と融合し、alpha-4鎖と共に細胞に発現させます。すると、alpha-3、alpha-4、alpha-5 鎖が三量体を形成できる条件でのみ、化学発光が検出されます。

このシステムは、これまで報告されている「alpha-3、alpha-4、alpha-5 鎖の決まった組み合わせで三量体を形成する」ことや、「三量体の形成に重要な機能部位を無くしたalpha-5鎖は三量体をつくれなくなる」ことなど、既知の特性を反映していることを明らかにしました。さらに、このシステムは、アルポート症候群で報告のある遺伝子変異をもったalpha-5 鎖が機能しなくなることも解析可能とし、アルポート症候群の原因となる4型コラーゲンが機能する状態と機能が失われた状態とを、比較的簡便で高感度に区別することができるシステムであることも証明されました。

研究を監修した首藤准教授は次のようにコメントしています。「治療薬候補化合物の網羅的な評価に応用可能であり、多検体を同時に解析することが可能です。本研究成果は、これまで、根治療法がない遺伝性難病アルポート症候群治療薬開発に道筋を与えるものす。」

本研究成果は、科学ジャーナル「Cell Chemical Biology」に平成30年3月8日掲載されました。

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[Source]

Kohei Omachi et. al. (2018). A split-luciferase-based trimer formation assay as a high-throughput screening platform for therapeutics in Alport syndrome. Cell Chemical Biology. doi: 10.1016/j.chembiol.2018.02.003


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