News Release

Covid-19の再燃そして更に新たなコロナウイルスの襲来に 備えたmRNAワクチン生産技術に関する研究開発

東京都医学総合研究所とiCONM が共同研究を開始

Business Announcement

Innovation Center of NanoMedicine

mRNA vaccine incorporated with immunostimulatory adjuvant functionality

image: In order for mRNA vaccine to function, it is required not only to efficiently introduce mRNA into antigen-presenting cells but also to activate them for effective antibody production. Substances that enhance the action of vaccines in this way are called "adjuvants." The introduction of adjuvants and mRNA into the same antigen-presenting cells enables them to effectively induce immunity to the antigen. view more 

Credit: 2020 Innovation Center of NanoMedicine

2020年6月4日 - 川崎: 公益財団法人川崎市産業振興財団 ナノ医療イノベーションセンター(センター長:片岡一則、所在地:川崎市川崎区、略称:iCONM)は、公益財団法人東京都医学総合研究所(所長:正井久雄、所在地:東京都世田谷区、略称:TMIMS)と、新型コロナウイルス (covid-19) の再来・再燃および更に新たなコロナウイルス襲来に備えたアジュバント機能一体型mRNAワクチンを迅速に開発する技術の確立を目指した共同研究を 4月1日に開始致しました。

iCONMでは、文部科学省・科学技術振興機構 (JST)による COI (Center of Innovation) プログラムの川崎拠点 COINSとして「体内病院」プロジェクトを進めております (https://coins.kawasaki-net.ne.jp/en/concept/index.html)。その一環として、mRNA医薬搭載型スマートナノマシンの研究開発を行っており、既に、変形性関節症や脊髄損傷の治療を目的とした研究でポジティブな結果を得ています(注1)。また、mRNA医薬は、その様々な特長から予防または治療ワクチンとしての応用が期待されており、COINSでも免疫機能の賦活化を促す免疫アジュバントと融合させた「アジュバント機能一体化mRNAワクチン」をがん治療に応用する研究を行っています(注2)。

TMIMS は、天然痘ワクチンの有効成分であるワクシニアウイルスを用いた長期免疫獲得の技術を有しており(注3)、この技術を応用して covid-19に対するワクチン開発を行っています。ヒトに感染するコロナウイルスは、現在7種類知られており、そのうち4種類は一般的な「風邪ウイルス」と呼ばれるものです。2002年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が、2012年にMERS(中東呼吸器症候群)、そして今年 covid-19 が流行し、約10年ごとにコロナウイルスの亜種が発生していることから、今後も新たなコロナウイルスの変異種が発生する可能性は高いと考えられています。

iCONMの基盤技術であるスマートナノマシンを TMIMSが持つ組換えワクチンの開発技術に活用し、covid-19の再来・再燃、更には将来発生するであろう新たなコロナウイルス亜種の襲来に備え、短期間で安価に効率よくワクチン生産ができる技術を開発することが、今回の共同研究の目的となります。

(注1) mRNA搭載型スマートナノマシン:様々な機能性分子を持つ両親媒性ポリマーを水中で会合させることにより形成される数十nmの大きさを持つ球状または棒状の分子集合体(ナノミセル)。1nmは、10億分の1メートル。人の身長を地球の直径に例えると、細胞一つの大きさは東京ドーム、スマートナノマシンの大きさはサッカーボールのサイズとなる。mRNAは、DNAとは異なり細胞核外でタンパク合成の設計図として働く。とても不安定な化合物であり、また炎症反応を惹起してしまうといった問題もあるため、そのままでは医薬品として扱い難いが、スマートナノマシンに搭載することで、これらの問題を解決できることが分かっている。

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総説:位髙啓史「mRNA医薬に利用されるキャリア開発:ナノミセル型キャリア」Drug Delivery System, 35, 27-34 (2020). https://doi.org/10.2745/dds.35.27

(注2) アジュバント機能一体型mRNAワクチン:mRNAワクチンが機能するためには、mRNAを効率よく抗原提示細胞に導入するのみならず、その抗原提示細胞を活性化する必要がある。このようにワクチンの働きを高める物質を「アジュバント」という。アジュバントとmRNAを同じ抗原提示細胞に導入することで、効果的に抗原に対する免疫を誘導することが可能となる。

S. Uchida, N. Yoshinaga, K. Yanagihara, E. Yuba, K. Kataoka, K. Itaka, “Designing immunostimulatory double stranded messenger RNA with maintained translational activity through hybridization with poly A sequences for effective vaccination” Biomaterials 150 162-170 (2018) (DOI: 10.1016/j.biomaterials.2017.09.033)

総説:内田智士「革新的医療の創出を目指した mRNAワクチンとそのアジュバントの開発」Bioindustry 35 (5), 9-17 (2018).

(注3)ワクシニアウイルスを用いたワクチン開発:天然痘の撲滅に寄与した種痘ワクチンは、天然痘ウイルスと同じオルソポックスウイルスに分類されるワクシニアウイルスの生ワクチンを主成分としたものである。近年は組換えワクチンのベースとして用いられることが多いが、

その理由として、静脈投与で全身へ投与できること、細胞核内へ移行せず染色体に組み込まれるリスクが無いこと、様々ながん細胞に感染すること、ウイルスのゲノムサイズが200kbpと大きく様々な遺伝子を導入できることなどが挙げられる。TMIMSでは、H5N1高病原性鳥インフルエンザに対する組換えワクチンを、ワクシニアウイルスを用いて作り出すことに成功している。

特許:小原道法、安井文彦、喜田 宏、迫田義博、石井孝司「新型インフルエンザウイルス由来ヘマグルチニンタンパク質遺伝子を有するDIs株由来組換えワクシニアウイルス」JP5884100B2 (2011).

ナノ医療イノベーションセンターについて

ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)は、キングスカイフロントにおけるライフサイエンス分野の拠点形成の核となる先導的な施設として、川崎市の依頼により、公益財団法人川崎市産業振興財団が、事業者兼提案者として国の施策を活用し、平成27年4月より運営を開始しました。有機合成・微細加工から前臨床試験までの研究開発を一気通貫で行うことが可能な最先端の設備と 実験機器を備え、産学官・医工連携によるオープンイノベーションを推進することを目的に設計された、世界でも類を見ない非常にユニークな研究施設です。 https://iconm.kawasaki-net.ne.jp/

東京都医学総合研究所について

東京都医学総合研究所は、2011 年 4 月に 3 つの研究所を統合し、2012 年 4 月 1 日、東京都知事より、公益財団法人として認定されました。いままで培ってきた成果を発展させ、医学に関する研究を総合的に行うことにより、医学の振興を図り、その研究成果の普及をとおして、都民の医療と福祉の向上に寄与することを目指します。 http://www.igakuken.or.jp/


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