image: Maps showing the concentrations of tau protein (BP-ND z-score) in the brains of patients with traumatic brain injury and healthy controls. This material relates to a paper that appeared in the Sep. 5, 2019, issue of Science Translational Medicine, published by AAAS. The paper, by N. Gorgoraptis at Imperial College London in London, UK; and colleagues was titled, "In vivo detection of cerebral tau pathology in long-term survivors of traumatic brain injury." view more
Credit: N. Gorgoraptis <i>et al., Science Translational Medicine</i> (2019)
一回の外傷性脳損傷(TBI)は長期にわたる神経変性につながり得ることを、32人を対象とした研究が示している。ほとんど解明されていないTBIの長期影響を明らかにすることに加えて、この研究の方法は、損傷を受けた患者における脳障害の診断およびモニタリングに改善をもたらし得るものである。この研究で示されたのは、TBIがタウ蛋白質の進行性の蓄積を引き起こす可能性があることである。タウ蛋白質は神経変性と関連し、アルツハイマー病で中心的な役割を担っている。研究者らは、TBIの影響を検討するために、PETイメージングを、タウ蛋白質に結合するイメージング製剤であるflortaucipirと組み合わせて用いた。これまでのイメージング研究のほとんどは、複数回の損傷を受けた運動選手を対象として行われているが、一回のTBIを受けた生存者の脳においてどのような変化が生じているかはあまり明らかにされていない。Nikos Gorgoraptisらは、flortaucipir PETスキャンを用いて、少なくとも18年前に交通事故か暴行により一回のTBIを受けた参加者21例を対象に、タウ蛋白質の分布状態を検討した。この実験から全体として、TBI群では健康な対照者11例と比較して、タウ蛋白質の蓄積が多く(flortaucipir結合が多いことが指標とされた)、記憶および認知の検査における成績が不良であることが示された。さらに、TBI群でタウ蛋白質の蓄積が多かった参加者はより重度の神経変性が認められ、タウ蛋白質の蓄積は脳の白質(神経細胞を覆って保護し、栄養する)への障害とも関連していた。TBI後の患者においてタウ蛋白質の検出を行えることは、タウ蛋白質を標的とした治療に関する将来の試験をデザインする助けとなり得る、と著者らは付け加えている。
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Journal
Science Translational Medicine