News Release

超広視野主焦点カメラ HSC による大規模観測データ、全世界に公開開始

Peer-Reviewed Publication

National Institutes of Natural Sciences

A Color Composite Image of a Small Piece of the Cosmos Field

image: A color composite image in the g, r and i bands of a small piece of the COSMOS field, as imaged by the Hyper Suprime-Cam. This image contains thousands of galaxies as faint as 27th magnitude. The galaxies are seen at such large distances that the light from them has taken billions of years to reach us. The light from the faintest galaxies was emitted when the universe was less than 10 % of its present age. view more 

Credit: Princeton University/HSC Project

すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC; ハイパー・シュプリーム・カム) で進められている大規模な戦略枠観測プログラム (HSC-SSP) の第1期データが、2017年2月27日 (ハワイ現地時間)、全世界に公開されました。HSC は 104 個の科学データ取得用 CCD (計8億 7000 万画素) で約 1.77 平方度の天域を一度に撮影できる超広視野カメラで、すばる望遠鏡の主焦点に搭載されています。これは「宇宙の国勢調査」とも言える大規模なデータで、これにより、宇宙の起源とその進化の解明にまた一歩近づくことができるでしょう。この美しい天体画像は天文学者のみならず、一般の方も利用することができるようになっています。

国立天文台では、2014年から 5, 6 年をかけて 300 夜もの観測を行う計画の HSC-SSP を、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)、台湾、米国・プリンストン大学の共同研究者と共に「オール・ジャパン」体制で進めています。5つの広帯域フィルター (g, r, i, z, y バンド) と狭帯域フィルターを用い、「ワイド」「ディープ」「ウルトラディープ」の3種類の深さでサーベイを行っています (図4)。

今回は2014年からの 1.7 年分、61.5 夜のデータが公開されました。観測領域は「ワイド」「ディープ」「ウルトラディープ」の順にそれぞれ 108, 26, 4 平方度、観測の深さ (注) を示す限界等級は r バンド (波長約 620 ナノメートル) で約 26.4, 26.6, 27.3 等です。5つの広帯域フィルターと4つの狭帯域フィルターによる多色データで、星像の広がり具合を表すシーイングは 0.6 ~ 0.8 秒角 (1秒角は 3600 分の1度) と、他の観測に比べてより深く、非常に質の高いデータです。今回の第1期データリリースでは、すでに 7000 万個の銀河や星がカタログになっています。このことからも、HSC-SSP はすばる望遠鏡と HSC の性能を最大限に活かしたサーベイと言えるでしょう。2015年の初期成果論文には、2.3 平方度にわたる天域において、重力レンズ効果の解析から銀河団規模のダークマター (暗黒物質) の集中が9つ存在することを突き止めました (Miyazaki et al. 2015, ApJ 807, 22, "Properties of Weak Lensing Clusters Detected on Hyper Suprime-Cam 2.3 Square Degree Field")。今回公開されたデータはこの約 50 倍の広さの天域を含んでいるため、ダークマターの統計的性質に迫る成果が期待されています。

また、総データ量も 80 テラバイト (一般的なデジタルカメラ画像の約 1000 万枚分) と実に膨大です。通常の解析手法ではこの規模のデータを調べるのは困難ですが、専用のデータベースやユーザーインターフェースを開発することで、このビッグデータによる研究が誰でもできるような工夫も施されています。

HSC-SSP 研究代表者の宮崎聡さん (国立天文台先端技術センター) は「HSC は広い天域を高い解像度で撮影できるカメラで、2014年より観測を続けてきています。今回そのデータの一部を、幅広い天文学研究に役立てていただくことを期待して、世界に向けて公開しました。ダークマターやダークエネルギー、さらには太陽系内天体から最遠方天体までの非常に幅広いサイエンスで大きな結果が得られると期待されています。現在、SSP チームでは多くの論文を執筆中で、日本天文学会の学術雑誌 (Publication of Astronomical Society of Japan) での特集号を企画しています。また、一般の方々にもご覧いただき、大望遠鏡で見た本物の宇宙を体験していただければと願っています」と、新たな研究成果への期待や社会的なインパクトについて述べています。

(注) 「深さ」とは、どのくらい暗い天体まで見ることができるか、つまりどのくらい遠い天体まで見ることができるかというものです。深さを決める要因は、望遠鏡の主鏡 (すばる望遠鏡の場合は口径 8.2 メートル) の集光力と露出時間です。

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